第四回 ブバスティスの子らってなぁに?
【宣伝】
拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版されました。ヤクザが邪神と戦うノワールな作品です。当講座で特集・解説もしておりますので、ぜひお読み下さい。
とはいえ、この講座を読みに来ている人ならきっともう読んでくれていると思いますが、仮に読んでなかった場合でも書籍版だけ買っておいて下さい。印税はこちらの口座もとい講座を充実させる為の取材費に回りますので、その為の簡単な初期投資ということで。
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【初めに】
此処を覗く皆様はご存知かもしれませんが、この度拙作「邪神任侠」がノベルゼロ様から出版させていただくこととなりました。
これで私も書籍化作家組! ありがとうございます! 皆さまの応援のお陰です! web版ではできなかった様々な描写を盛り込み、濃いクトゥルフ成分を詰め込んだ素敵な作品に仕上げますので、どうぞ楽しみにしていてください。
はい、それはさておき今回なんとリクエスト頂いちゃいました。神々以外の奉仕種族や独立種族について取り上げて欲しいということで、何か良いものが無いかとちょっと探してきちゃいました。
皆が知っているようなものを深く語るのも(PV数稼ぎには)良いのですが、折角なら未知の世界をお見せしたい。
そう思って見つけました! こちらブバスティスの子ら!
TRPGの方ではルルブにもマレモン(大体の神格とクリーチャーが載ってる便利ブック)にも載ってない! 卓仲間にちょっと差をつけたいそこの貴方! 是非読んでいってくださいね!
【概要~ブバスティスってなぁに?~】
要するにエジプトの猫神(獅子神)バステトの別名だと思って下さい。
パズドラとかでも出ますねバステト。ニャルも出るそうですねパズドラ。しかもニャルは一度やられると別の姿になって大暴れするそうですね。完全に原作再現で知らない人が初見殺しされる構成になってるのめっちゃ面白いですね。
まあそういう与太話はさておき、このバステトはクトゥルフ神話ですと旧支配者と対立する旧神の一角ということになっています。これはTRPGの設定で、ラブクラフトのエッセイ(Cats and Dogsで検索!)で「気高く尊き小さな皇帝たる猫というのはねえ君ぃ、バーストを崇め奉る高位の神官でねえ~!」という与太話を元に旧神として無理やりカテゴライズしちゃったという経歴が有るようです。
なので、クトゥルフ神話関連作品に実際にバステトが出て来る時は旧支配者の対立者というよりむしろ、血なまぐさい生贄を要求するエジプトの猫神(獅子神)としての側面が強く出てしまっています。この後紹介する作品“ブバスティスの子ら”ではなんとグールの女神という設定になっているくらいですからね。
拙作ケイオスハウルでは主人公の母親がこのバステトと契約しており、四天王最後の将として大暴れさせます。旧支配者か旧神か正直微妙なことを活かして、この神の人間寄りな側面と荒ぶる側面の二つを同時に召喚して力を借りている状態です。脳内CV田村ゆかりさんな上に、作中で神殺し達成してて、強キャラof強キャラなので、ケイオスハウルを読む時は彼女の出番を楽しみにしていて欲しいですね。
さて、気になる神としての権能ですが、闘争、家庭の守護、疫病の予防、多産、豊穣、芸術、性愛とこれまた沢山ございます。基本的な大地母神としての権能に加えて、多くの女神と同一視された結果、とてつもない量の権能を手に入れています。さて、こうなるとシュブ=ニグラスとの関連が怪しくなってきますが、今回語るべきはあくまで“ブバスティスの落とし子”ですので、話はこの辺にしておきましょう。
【概要~ブバスティスの子らってなぁに?~】
やっとこさ本題、じゃあブバスティスの子らとは何か?
それはクトゥルフ作家にして
ただマニアックな奉仕種族の話を読む為に青心社「暗黒神話体系シリーズ クトゥルー13」を買ってもらうのも申し訳ないので、ここで簡単に説明します。いやめっちゃ面白い話だけど仕方ないですよね! 読まないのは損なんですけどね! 凄く面白いから気になったら買って下さい!
この作品の中で、ブバスティスの子らは、様々な動物と人間の混血種として登場します。
額から蛇の生えた人間、山羊の角の生えた人間、インドのガネーシャを思わせる象の鼻を持つ人間、古代ギリシャの物語に現れるようなケンタウロスに良く似た人間、もしくは何者にもなれなかった出来損ないの肉塊、そういった異形の混血種達の総称がブバスティスの子らです。ちなみに大体食人大好きです。
彼等はブバスティスを信奉する人間達によって人為的に生み出された存在です。邪教を信じ、それ故にエジプトの地を追い出された人々が、イギリスへと移り住んでなおも神の似姿を生み出すために行った実験の産物です。研究の意図としては「神が人と獣の姿をとれるなら、人と獣の混血児を生み出せば神に限りなく近い存在を生み出せるのでは?」という冒涜的なアイデアが有った訳ですが、確かに生ける神像を生み出すのは信仰の観点で言えば非常に有効ですが、コストと結果が見合っているとは言い難いですね。この作品の中では、自らの研究を引き継ぐ人間も無いまま、享楽にふけり食人に走る実験動物を量産するばかりで、目的と手段が逆転してしまっています。これでは神も呼べないし、布教もできない。賢い筈の神官の行為とは思えません。
ですが、私はこうも思うのです。この物語で主人公達が見たものとは本当に“出来損ない”であったのではないかと。主人公が踏み入った神殿の中で見た異形も、神の似姿も、全ては不完全な失敗作。それで廃棄されてしまったのではないかと。
だとすれば別段不自然ではありません。失敗作と先祖の亡骸を地下へと葬り、成功作と実験データ及びプロトコルだけを持って神官たちの末裔は何処かに消えた。そして今も神に至る道を模索している。至って真っ当な探求の道ですね。
もしかしたら貴方の隣に居る人も、神の似姿として作られた“良く出来た生ける偶像”かもしれません。
いや、もしかしたら貴方自身が……。
【概要~「ブバスティスの子ら」における神殿が単なる廃棄場だったという説について~】
さて、ブバスティスの子らについて説明するとなんとなく感じてもらえると思うんですが、先程あげたバステトのイメージと違いませんか?
まあそりゃロバート・ブロックが趣味でおどろおどろしいイメージを付与してるし、作中に出てくるブバスティスの子らを生み出したのが狂信者なので、普通のバステトとイメージが違うのは当たり前ですけど、それにしたって違いすぎる。
淫靡な儀式を行うのは性愛の神だから良いでしょう。
血なまぐさい生贄を求めるのも、殺戮の神セクメトが同一視される神に居ますし良いでしょう。
俺が納得出来ないのは「ブバスティスの子ら」の作中では本拠地が暗い地下深くという点なんですよ。
バステト自身が太陽神ラーから生まれた存在で、セクメトもハトホルも太陽をシンボルとする神です。なのに神殿が鉱山の採掘坑の奥って何か違う気がします。別に太陽のシンボルが有る訳でもないですし。まあブバスティスの子らこそがシンボルそのものだったんでしょうけどね。
ただ、もしかしたら太陽神の神殿としての象徴が本来は有ったのかもしれません。
主人公が物語の中で神殿を見た時に、それらしい描写が無かったのは、シンボルが既に持ち去られていたのではないでしょうか?
だから物語中には登場しなかった。大事なシンボルは今の研究所へ、神殿へ、持ち去られてしまっていた。
となるとやはり、あの作品の中で出てきたバステト神殿は失敗作の廃棄場だったり、初期の研究者達の墓標だったんじゃないでしょうかね。
【最後に】
という訳で今回は「ブバスティスの子ら」について取り上げさせていただきました。
お好きな方は知っているでしょうし、初めて聞いたという方も少なくは無い筈です。ですが、どちらの方にも楽しんでもらえたなら、自分の狙い通りの結果かなあ……と。
楽しんでもらえたらそのままの勢いで邪神任侠呼んで感想とかください。書籍版とweb版では環境の違いも踏まえて幅広く性癖に刺していける作品へ変えていきたいと思っているので、今のうちにweb版のフィードバックが欲しいんですよね。協力していただける方お待ちしております。
それでは今回はここまで。
くれぐれも次回まで闇からの囁きに耳を傾けぬよう。
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