第四十四回 ジャック・ド・モレーのスキル・宝具・性別などの解説【FGO】

【初めに】


 ジャック・ド・モレー、性別の判定は完全に女性でしたね。生えてるかも知れねえじゃん!って言ったのは特に撤回しないのですが、どうやら誇り高く清貧を旨とする騎士団長が身も心も淫靡な雌に落とされてしまっていたのは事実のようです。じゃあ生えてるかも知れねえじゃん。性別のありようは肉体にとらわれるべきじゃないと思いませんか? 女性判定でも生えてても良いじゃないですか。僕は別にどちらでも良いとおもいますが、そういうのが昨今のコレクトネスだと思うんですよね。


 さて、それでは始めていきましょう。今回は彼女の台詞、スキル、宝具、モーションなどについてクトゥルー神話に関する要素を解説していきたいと思います。ガチャには敗北したので自分で引けた訳ではなく、協力してくださる方からの情報を元にまとめています。ガチャに負けた私を助けてくださる方、お待ちしております。


【ジャック・ド・モレーの性別】


 これについてもまずはシュブ=ニグラスにからめて詳しく話していきましょう。前回のお話を前提にしているので、先に

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880900124/episodes/16816700428276036860

 こちらの記事も読んでおいてください。さて、この記事を踏まえた上で「ジャック・ド・モレーの紹介」「無辜の怪物」の説明文を見てみましょう。


『フォーリナーのジャック・ド・モレーは、騎士団を羨む権力者や民衆が広めた醜聞と汚名により霊基の変質した無辜の英霊。

 さらには人類の堕落を促す“深淵の聖母”と称される邪神が憑くことで、その悪性をブーストしている。

 ちなみに不吉の象徴『13日目の金曜日』は騎士団が一斉摘発された事件日に由来すると流伝される。』(絆Lv2)

『○無辜の怪物:A

 生前の意思や姿と関係なく、風評によって真相をねじ曲げられたものの深度を指す。

 曰く、山羊頭の悪魔を崇め、淫靡なる儀式にふけった。

 曰く、騎士団の財宝とその活動は今も受け継がれる。

 騎士団を貶めた濡れ衣と、後世の膨大な伝承群は、快楽を貪るに適した魅惑的な肉体にモレーを堕落させ、聖地奪還を志す修道士とは別個の存在へと変質させた。』(絆Lv4)


 まず段階として「濡れ衣や風評による無辜の怪物での変貌の下地(Aランクなのでかなり自由が効く)」→「大地母神の神官たちが古来より女装して儀礼にあたったという史実・信仰・魔術体系」→(古来より「俺のセイバーを女にしやがった」を可能としていた型月力学)→「深淵の聖母(シュブ=ニグラス)の介入による肉体改造」というステップで完璧に雌落ちお兄さんママにされてしまったことが想定されます。

 ここで重要なのがジャック・ド・モレーはフランスの英雄だったことです。フランスは、クトゥルー神話でも非常に重要な魔導書『屍食教典儀』が執筆された土地でもあります。

 この『屍食教典儀』は名前の通り人肉嗜食カニバリズム死体性愛ネクロフィリア、その他諸々の儀式や魔術について記され――なによりシュブ=ニグラスを祀る儀式についても記述があるとされています。これが非常に重要なポイントです。

 前回話した通り、ジャック・ド・モレーが持っていると噂されたバフォメットへの信仰自体が後世に無理やりこじつけられた偽りのものです。そしてこの『屍食教典儀』はなんと1702年、ジャック・ド・モレーが死んでかなり経ってから書かれたものなのです。この当時にジャック・ド・モレーの再研究も進んでおり、捏造した証拠の押しつけや解釈が流行したと考えると、この頃にフランスで活動していたシュブ=ニグラスを信奉する一団がかなり計画的に「無実の罪で死に、風説で歪められた英雄を、シュブ=ニグラス降臨の為の経路として英霊システムの中で悪用した」という仮説が浮かび上がってきます。ホームズが意図的にモリアーティの記述を削除したのと同じ原理で、逆のことをやっているわけですね。

 1702年、17~18世紀時点で、『屍食教典儀』を書いたダレット卿やその周囲の人々がそういったことまで計算していたとすれば、問題は案外根深く、また同時に同じような手口で他の英霊が汚染されている可能性は否定できないのです。

 そうなるとどのあたりが候補になるんでしょうね。個人的にはイグ、ツァトゥグア、ノーデンス、シアエガ、アトラック=ナチャ、バステト、それにティンダロスの猟犬あたりが扱われそうな気がするのですが。それらと縁を作れそうな英霊、思いついたら教えてください。


【スキル台詞「Fluctuat nec mergitur」】


 たゆたえども沈まず、という意味だそうです。

 フランス語とかラテン語はあまり詳しくないのですがパリの標語みたいなものらしいですね。紋章に使われている言葉だそうです。ところでこの台詞出た当時にはもうジャック・ド・モレーはとっくに処刑されているんですよね。そして本人が完全に堕落して沈みきっているようにも見えるんですよね。

 一応、激動の歴史の中でも人々の営みを絶やしはしないという決意の言葉なので、カルデアに味方する立場で口にするにはふさわしい言葉ではあります。


【宝具台詞「ルラプスの炎の疼き」 】


 ルラプス(relaps/relapse) という言葉があります。これは再発という意味で、異端信仰から一度悔い改めたものが再びその思想に戻ってしまった者を指します。これは非常に厳しく裁かれたとされています。

 まだ比較的正気を残している段階での台詞ということも考えると、無辜の怪物として歪められた上、更にシュブ=ニグラスの誘惑に屈してメスお兄さんにされたことで自分をルラプスと呼んでいると考えるべきでしょう。

「どういうわけでー、史実と異なる女の肉体なのかって? まあ、話せば長いんだけど……要は、ルラプス。あたしがさ、人間の良心も、神の愛も信じ切れず異端に走っちゃったって事。英霊の器なんかじゃなかったんだよ。……ん? 属性秩序・善でセイバーのジャック・ド・モレー? やだなぁ、そんなのいる訳ないってば。もしいたら、シテ島の下に埋めてもらっても構わないよ」

 って本人も言っている訳ですし。


【宝具台詞「Abîme abîme domina」】


 abime→深淵

 domina→支配、支配者、女子修道院のトップという意味も

 なので深淵の聖母を指す言葉と考えていいと思います。

 テンプル騎士団が騎士修道会ということも考えると、このdominaが修道会の長としてのジャック・ド・モレーを指すのかもしれません。あるいはその信仰対象であるシュブ=ニグラスでしょうか。


【宝具台詞「Iä Iä Thnarolo yoranalakh Sirrharie」】


 1985年出版、クトゥルフ神話TRPG第二版サプリメント『Fragments of Fear: The Second Cthulhu Companion』に掲載されていたシュブ=ニグラス崇拝の儀式の際に使われていた詠唱です。アメリカのミシガン州におけるカルトでの詠唱ですね。

 最初にこの詠唱を使った作品がおそらく別にあるのではないかと思うのですが、現時点でアクセスできたのはこのサプリメントの情報のみでした。

 思い当たるところがある方がいれば教えてください。詠唱の全文を引用すると

「la, la, Shub·Niggurath, the Black Goat of

 the Woods with a Thousand Young! Iar' Mnarh'lu w'gah'-nag!

 thnarolo yoranalakh Sirrharie! Sirrharie! Y~okh'nal noh'iklom! Noh'iklom raj'annigh!

 Ia! la! Shub-Nlggurath!

 Thnarlo yoranalkah! The Goat! The Goat of the Woods!

 Accept now my sacrifices!」

 となりまして「我が生贄を受け取り給え!」という一節も、実はここからの引用であるということが分かります。

 これだけこの詠唱が綺麗にハマるとなるともしかすると完全にここが元ネタなのかもしれません。


【最後に】


 というわけでジャック・ド・モレーのスキルと宝具について解説させていただきました。もしかしたら彼女は俺のお母さんなのかもしれません。女にさせられてしまったしっかり者のお兄さんってママ味が非常に増しませんか? 特にうっかり屋さんなところも良いじゃないですか。

 ところでなんですが、ツイッターだと不十分な文字数や内容で拡散されちゃうので実はあんまり良くなくて、シュブ=ニグラスやジャック・ド・モレーに込められた面白さを半分も伝えられないんですよ。

 その点こっちだと何故私が「このジャック・ド・モレーは両性具有の可能性があると思います!!!!!!!!!」って大興奮していたのかその理由を事細かに解説して伝えることができるのでとっても嬉しいんですね。

 みんなもモレーちゃんの子供かもしれない。やあブラザー、やあシスター。みんなでモレーちゃん推していこうな。

 今後もシナリオの進行とともに解説を増やしたり質問に答えるコーナーを作るので、コメントお待ちしております。よろしくおねがいいたします。


 それでは次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。

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