第五十二回 ミ=ゴってなぁに?②
【初めに】
2022年12月5日。完治診断いただきました!
まあ特殊な型の悪性リンパ腫なのでまだまだ経過観察は必要ですが、ひとまず治療としては一段落。身体もかなり抗がん剤が抜けて楽になりました。
運が良かったんだと思います。
あとは薬剤師の仕事を安定させて、地道に良い文章を書いて生きたいと思います。
さて、そんな12月5日に発売されたのが『暗黒神話TRPGトレイル・オブ・クトゥルー シナリオ集 宇宙の彼方より』です。
私も「評判修理者」のシナリオ翻訳で参加しました。ぜひ地元書店や通販サイトなどでお買い求めください!
どれもこれも面白いシステムの組み込まれたシナリオですから、読むだけでも相当楽しいですよ!
さて今回は年末にミ=ゴの話をしていきましょう。
リクエストでもらっていたシャッガイの昆虫とか、アトゥちゃんの出てくる「蠢く密林」の話とかしたいんですが、このミ=ゴの話を今の知識でおさらいしたかったんですよね。そして来年はうさぎ年記念のムーンビーストで、それぞれやっていきたいと思います。
それではよろしくお願いします!
【菌類としてのミ=ゴ】
ロブスターや蟹のような外見をしていますが、身体の組成は植物や菌類に近いので、ユゴスよりの菌類などと呼ばれたりします。
甲殻のようなものはおそらく菌類が持つ細胞壁。特に分厚い細胞壁だと考えられます。グラム染色したらバリバリの陽性でしょう。青に染まります。
この菌類が高度な知性を持った宇宙人として振る舞うというラヴクラフトの着想を語る上では、ウィリアム・H・ホジソンの「夜の声」という短編を無視できません。この作品は東映映画の『マタンゴ』の元ネタになってます。ゴジラのスタッフが参加した名作です。「夜の声」は自らを食べた者に寄生する茸が群生する無人島を描いています。
そもそも菌類、ある種の粘菌は迷路の攻略などで最適解を導き出せることが知られています。粘菌コンピュータなどと言われますね。ミ=ゴは優れた知性と科学技術を保持していますが、これらは菌類の特性を利用して自らが生きたコンピュータとなることで生み出されたのではないでしょうか?
また、菌類に類似した肉体は、特殊な電子の振る舞いにより写真に映らないそうです。「電子が動くとどうして写真に写らないの?」とお思いでしょう。共鳴構造と呼ばれる原子同士の単結合や二重結合の連続した移り変わりが発生する構造があると、光を吸収して次々と物質の原子の結合が変化していきます。おそらくミ=ゴの細胞壁には可視光の吸収・透過をある程度いじれる仕組みが有るのではないかと思います。分子結合を少しずつ入れ替えれば、共鳴構造で吸収できる光の波長は変わっていくので、これを使って写真撮影をごまかしているのではないでしょうか。
ちなみに共鳴構造を使った発色で有名なのは人参にも入っているβカロテン。βカロテンは特に長い共鳴構造を有しているので、あの人参のオレンジを綺麗に出す元となっています。
ちなみにミ=ゴの中には頭部の色彩変化で意思疎通を行うタイプが居るので、それも共鳴構造の作成と組み換えでカメラの目をごまかしているという仮説を私が発想した理由となっています。
いや、原理上、肉眼で見えてカメラで写らないはありえないので、それこそ魔法や幽体といった理屈から説明したほうが早いのですが、ミ=ゴの書かれた当時はカメラも新発明として人気でしたからね。そういう事情もあったんだと思いますけどね。でもこれまで出た描写から理屈をつけるなら、共鳴構造の作成と組み換えが一番筋は通るのではないかとここで提案しておきます。
【ミ=ゴの技術力】
肉体と癒着するバイオアーマー、人間を脳だけで生存させる外科手術、電気銃を始めとした様々な武器。主にTRPGで様々な技術を披露しています。
そんな彼らは地球にだけ存在する金属をさがしにきています。このあたりは『グラーキの黙示1』(サウザンブックス社)に掲載の「暗黒星の陥穽」に詳しいので要チェックです。基本的に地球に来るミ=ゴは資源が目的で、そのために人類と提携することもあるということだけ抑えてくれれば大丈夫です。
これの名前が《トゥク=ル》金属だと思いこんでいたんですがこれはユゴスでのみ採掘される金属で逆でしたね。ごめんなさい。
この優れた技術は肉体改造にも使われており、地球の様々な住環境や宇宙を単独で移動する際にも使われます。
これは個人的な推測になるのですが、優れた科学技術を菌類に酷似した種族特性に対して用いることで、遺伝子操作技術がかなり発展しているのではないかと思っているんですよね。
【ミ=ゴの品種】
森瀬繚先生は著書の『クトゥルー神話解体新書』の中でミ=ゴの品種について触れておられます。
●バーモント=ヒマラヤ種→いわゆるミ=ゴのイラストで多いもの。翼が映えている珍しい種類なのだが、作品で扱われることが多い。
●甲殻蜥蜴→胴体が蜥蜴に似ている。イギリスで多く見られる。
●
この通り、ミ=ゴという名前が発見された土地での雪男の名前というだけなので、それなら“
ここでは通りの良さや読みに来る方が見つけやすいようにという配慮で今後もミ=ゴって呼びますね。
さてこの品種分けで私は気になったのですが、ミ=ゴが菌類や植物に類似した身体構造を持っているのならば、通常の生物に比べて品種改良が楽なのではないでしょうか。
植物にせよ、菌類にせよ、繁殖のペースが早く、遺伝子も変異しやすく、分裂による無性生殖も、交配による有性生殖も対応ができる。そこに優れた知性と技術力があればまず真っ先に自分の肉体をいじくり回すと思うんですよ。
世界各地に様々な姿でミ=ゴの伝承が残っていることから、一口にミ=ゴといっても多種多様な品種があって、仕事や行動する土地に合わせた品種を開発して各地に向かっていると推測します。
であれば、我々が知らないだけでミ=ゴの故郷には頭脳労働担当や広域監視担当など様々なミ=ゴが居て独自の世界を作っていると見るべきでしょう。ニャルラトホテプやシュブ=ニグラス、その他にも多くの神々を信仰している理由も、品種によって考え方や仕事が違う為、それに合わせて信仰が多様化しているから、という形で説明できます。
【マタンゴとミ=ゴ】
仮にミ=ゴが様々な品種を持つとすれば、彼らは多様性の概念を持ち、多様性を肯定的に受け止めることでしょう。その多様性の確保の為に、他の星の生物のサンプルを欲しがるのではないかと考えています。
先程紹介した「夜の声」や『マタンゴ』のように、人間の身体に真菌ネットワークを張り巡らせて、動物と菌類が融合した新しい生命体を生み出せば、菌類だけで抽象的な思考を行う為の脳や神経をゼロから開発する必要がなくなります。最低限動くように他の生物の身体に菌糸を張り巡らせて、他の生物の身体を奪ってからその中で使える機能を試し、有用ならばそのまま取り込む。そしてそれを元に品種改良を行う。こういうことができるのではないかと私は考えます。
そうなるとミ=ゴの物語で有名な脳缶の意味も違ってきますよね。
確かに優れた知性を持っているミ=ゴですが、地球人類とは価値観が全く違います。その異なる価値観を効率的に取り込むならば、地球人類の脳にミ=ゴを感染・繁殖させて地球人の脳が入ったミ=ゴを作ってしまえばいいことになります。ミ=ゴであり人間でもある。そういう物がいれば彼らの採掘は大いに進む筈です。
ですから僕はあの脳缶が、新しいミ=ゴを生み出す為の蛹に見えてならないのです。
【最後に】
というわけで今年の最後はミ=ゴ講座でした。最新の情報を元に考察的な内容が増えてしまいましたが、楽しんでもらえたでしょうか。
今年は忙しい時期が多く、あまりこちらの更新ができなかったのですが、来年はうまいことwebの更新も増やしたいですね。っていうか執筆だけで生きていきたいですね。
リクエストいただいたものは準備整い次第更新するので待っていてください。
それでは来年もよろしくお願いします。
次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。
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