第三十二回 ドリームランドってなぁに?

【はじめに】


 前回のアビゲイル(夏)は壮絶な戦いでした……壮絶すぎたので短くまとめたショートカット版を出したいんですが異世界麻薬王が思ったよりウケてしまったのでそっちの方の準備などに時間使いたいのでちょっとまっててくださいね。

 異世界麻薬王は薬物乱用防止を目的として執筆された真面目で健全な異世界ファンタジーなのでぜひご覧ください。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054897365656


 さて、今回はアビゲイル(夏)でフィーチャーされたドリームランドについてご紹介していきたいなと思います。

 いや、アビゲイル(夏)の時にドリームランドの記事が無かったせいで説明も執筆もかなり苦戦したし「この辺りの話はドリームランドの記事にまとめてます^^」ができなくなってかなり文字数が膨らんだという背景があるわけですよ。不覚を取りました。ガチャも危うく敗北しかけたので本当に危なかった。同じことがまたあると悲しい&ドリームランドって何? って聞かれることもちょいちょい多くなってきた&自分がドリームランド関係の書籍を最近読んでなかったのを実感したので、今回はドリームランドについてバシッとまとめていきたいと思います。よろしくおねがいします。


【ドリームランドってなぁに?】


 まずはここから説明していきましょう。

 ドリームランドとは人々が見る夢の世界、すなわち異世界です。最近は幻夢境ドリームランド。以前は幻夢郷ドリームランドという表記が多く、その前には夢の国ドリームランドと呼ばれていました。地球以外の星でも、住民が夢を見るならばドリームランドは存在するそうです。ラヴクラフト御大やその周辺の作家によって、土星、木星、冥王星のドリームランド(に類する場所)の存在については言及されています。夢の異世界なのに星ごとにあるってなんだか妙な話ですよね。

 いきなり個人的見解を披露するのですが、星ごとにドリームランドが設定されているという説明が正しいならば、ドリームランドという世界は、知的生命体の見る夢の世界というよりも、むしろ星に由来して構築された世界と見るべきなのではないかと思うんですよね。夢を通じて星が用意したそれぞれのドリームランド(に相当する世界)にアクセスしているだけではないか、と。


【考察:ドリームランドと宇宙猫】


 そこで地球以外のドリームランドの描写は殆ど無いに等しいのですが、猫に注目して少し比較をしてみました。

 地球のドリームランドは、地球に類似した気候条件や地質条件を備え、剣と魔法のファンタジー風味に展開しています。寒いと言っても木星ほどではありません。熱い場所だって水星の太陽面ほどではありません。地球が基準です。住んでいる猫も普通の猫です。夢を見る猫もいるし、ドリームランドこそが住処という猫も少なくありません。

 土星のドリームランドにも猫がいます。しかしこれがどうも猫じゃない。極めて大きくまた異様な姿をしているにも関わらず地球猫から猫と呼ばれている。地球人が宇宙人を人呼ぶしかないからそう呼んでいるくらいのふんわりとした感覚です。

 この猫たちはいずれも、人間にとって非常に難易度の高い『ドリームランドにおける星間移動』を身一つで可能とするわけですよ。鳥が飛び、魚が泳ぐように、ドリームランドにおける猫は宇宙を渡る種族なのです。地球猫vs土星猫~月面上の決戦~とかやってますからね、あいつら。

 ドリームランドにおける星と星の間はネコジャンプで移動が可能です。月と地球の移動は、月が地球の衛星なので判断が分かれるところですが、すくなくとも土星から月へはネコジャンプで移動が可能になっています。地球猫の抵抗が無ければ土星猫はあっさり地球のドリームランドにまで手を伸ばしたことでしょう。

 つまり土星のドリームランドと地球のドリームランドは一般的な説明よりも近いし猫からすれば繋がっていると判断できる訳です。


 よって、ドリームランドは星ごとに全く別の世界という訳ではなく、宇宙ドリームランドのような大きな世界があり、その中に星と対応する個別のドリームランドがあると見るべきだと思います。次元的に比較的不安定な宇宙ドリームランドの中に、夢を見る住民たちが多い星に対応する形で、地球ドリームランドや土星ドリームランドや冥王星ドリームランドが発生している。まあ星と星の間を移動するのは現代人にとっても難しいですし、別の世界のようなもので移動が難しいという説明はそういうことだと納得ができます。


 それでは以下の記事では地球のドリームランドに触れます。他所の星のドリームランドについてはそんなに資料があるわけでもないのでお許しください。


【地球のドリームランドの歩き方】


 地球のドリームランドは、地球に類似した気候条件や地質条件を備え、剣と魔法のファンタジー風味に展開しています。夢見人と呼ばれる感受性豊かな人々が主人公になりがちな為か、作品の中ではそれほど剣は活躍しません。ですが、鍛えておけばそこらへんに現れる怪物ぐらいは対応できるのでおすすめです。ドリームランドを扱った作品に出るランドルフ・カーターはかつて軍人として従軍していましたが、ドリームランドに本格的に突入した頃には老いていたせいか、あまりパワーに頼る動きはしていなかったようです。ですが、暴力で切り抜けられる筈の場面で暴力を使うのは決して悪いことではありません。ドリームランドのモンスターやニャルラトホテプの手下の怪しい連中から逃げ切るためにも、嗜む程度の暴力は必要です。

 勿論いちばん大事なのは危ないところに近づかないこと。もしもドリームランドに迷い込んでしまったら、近づくなと言われたところには近づかないようにしましょう。


 このドリームランドの地図なのですが、ラヴクラフト以降、多くの方がドリームランドについての地図を遺しており、これらはそれぞれ微妙に異なっております。ラヴクラフト御大が明確に地図を残していなかったので、描写を頼りに再現するしかなかったためです。東西南北にそれぞれ大陸や島があり、その間を海が満たしている為、船による移動が重要になっています。“白い帆船”などは正しくドリームランドを巡る話ですね。この記事を執筆している2020/09/18時点では、森瀬先生の「新訳クトゥルー神話コレクション4 未知なるカダスを夢に求めて」に掲載された地図が最新で、作中の描写に対する最新の知見を元に作られています。ドリームランドに飛び込みたいあなたは、備えとしてぜひとも購入ください。


 さて、このドリームランドに飛び込みたいという奇特な方に向けて、ドリームランドに入る時の話もしてみましょう。ドリームランドに入る為には、あなたも時々見る浅い眠りの夢の中にある出入り口を見つけなくてはいけません。そこから七十段の階段を降りると、ドリームランドへとつながる〈焔の洞窟〉へと至ります。そこは洞窟を用いた神殿になっており、神官のナシュトとカマン=ターの二人が待っています。ここまで来ることができるならば、あなたが悪意を持っていない限り、彼らはある程度会話をしてくれるはずです。彼らのアドヴァイスや警告を聞いて更に進むか一度引き返すかしっかり考えましょう。それでも進むとなったら七百段の階段を降りて〈深き眠りの門〉へ行かねばなりません。門を越えれば魔法の森です。ここには人間に敵対的な種族も居て、ドリームランドに突入した人々(夢見人)が多く失踪しています。自らのカラテを鍛えるか、護身用の魔術を嗜むか、猫に優しくしておいてもしもの時に助けてもらえるようにしておきましょう。ランドルフ・カーターのようなすぐれた交渉術を身につけても良いです。夢ばっか見てちゃ一流の夢見人にはなれないということですね、実に世知辛い。生き残っていきましょう。グッドドリームランドジャーニー。

 とはいえ、こういった手順を踏まなくても素質があるならば夢を通じていつの間にかドリームランドに突入しているものです。そういった偶発的な突入の場合は親切なガイドに恵まれていることも多いので、しっかりと話を聞きましょう。ガイドが悪意を持っている場合ですが、それはあなたが明確な意図を持って危険に近づいている時か、相手がドリームランドにて活発な活動を確認される数少ない邪神ニャルラトホテプである可能性が高いです。諦めてください。


【地球のドリームランドの地名】


 ニャルラトホテプにも目をつけられず、親切な人々による保護を得て、幸運にもドリームランドの観光を許された皆さん。そんな皆さんがどこに行けば良いかの目安とするべく、代表的な地名をいくつか紹介しておきたいと思います。一度は行ってみたい場所(◯)を三つ、おすすめできない場所(●)を三つ、それぞれあげていきたいとおもいます。


◯ウルタール

 ここはもうぜひとも行って欲しいですね。魔法の森からアクセス良好、村も夢見人慣れしているし、とにもかくにも人間フレンドリーな普通の村です。最初の村とかそういうノリですよ。猫をいじめると高確率で死に繋がりますが猫をいじめる人間はドリームランドではどのみち長生きできないので大丈夫です。かくいう私は犬派ですが、猫に酷いことしなければセーフなので安心してお越しください。


◯セレファイス

 ここの王様は夢見人。そう、モニターの前のあなたとおなじ世界からやってきた方なのです! 夢見人の先輩としてドリームランド初心者のあなたに親切なアドヴァイスをしてくれることでしょう。しかもここに居る限りは若さを保てるので、美容健康にも優しい。空中都市のセラニアンにもアクセスできるので、ドリームランドに来たならぜひ一度は見に行って欲しいものです。大理石の壁、青銅の門、縞瑪瑙の道といった観光名所は要チェックです!


◯ソナ=ニル

 風景が良い。とにかく風景が良く、苦しみと死からも解放される。いい事尽くめです。都市、田園、展望タワー、港。きっと御飯も美味しいと思われます。ドリームランドのかなり端の方にあるので、長距離の旅をする経験を積む上でも、一度行ってみて損はないと思います。


●カダス

 絶対に行ってはいけません。未知なるカダスを夢に求めるのは、ランドルフ・カーターとアビゲイル・ウィリアムズだけで十分です。神々が隠れ住まう土地とされていますが、目指せばニャルラトホテプに妨害され、妨害され、妨害され、挙句の果てにはうっかりアザトースの玉座へ直通してしまいます。


●ザール

 ここは初めてだとうっかりしやすいので注意です。周囲に満ちる死の臭いに気づかないと綺麗な見た目に引きずり込まれてあっという間におしまいです。ちかづかないようにしましょう。


●ダイラス=リーン

 なまじ人通りが多く賑やかな港湾都市なので注意です。危険な神話生物であるムーンビーストが交易に来ていたり、人さらいが居たり、邪悪な紅玉ルビーが流通しています。この紅玉ルビーが曲者で、タイタス・クロウシリーズでは“光を超ゆるもの”という邪神の眷属たちが、これを使って町を支配しようとしていました。


【終わりに】


 ドリームランドが危険な場所だとお分かりいただけたでしょうか。

 一歩踏み外せば即座に取って食われます。ですが、治安が悪いかって言えばそれは違って、むしろ治安は良い場所だと私は考えています。

 安全な場所、危ない場所、安全な存在、危険な存在、がそれぞれはっきりしていて、それらが一つの世界の中で調和をとっている世界を、治安が悪いと形容するのは違うと思うんですよね。世界に隈なくルールが行き渡り、その中で生きていることは素晴らしいと思いませんか。旧支配者たちの気まぐれで何時吹き飛んでもおかしくないはずの儚い法則が未だこの世界に残っているという奇跡。ドリームランドにせよ、今この瞬間にせよ、奇跡の輝きに世界は満ちているのです。なので現実にせよドリームランドにせよ、奇跡的であるという意味でそう変わらないものなのです。どちらにせよ発狂する時は発狂します諦めてください。それは決して良いことではありませんが、思うほど悪いことでもないのです。


 だからといって自分から暗黒に突っ込む必要は何一つありません。

 次回までくれぐれも闇からの囁きに耳を傾けぬように。


【宣伝】


 さて、そんなドリームランドよりも治安の悪い異世界のお話です。

 しがない高校教師が、麻薬村のエルフたちと暮らす内に、悪徳貴族と戦う必要に迫られた挙げ句、麻薬王にまで成り上がってしまう異世界転生ものです。

 比較的治安が悪く政府が腐敗しているので、麻薬王になったとしてもそこまで倫理的問題は発生しない安心設計です。

 フォロー、☆、応援コメントなど、とっても歓迎です。


「異世界麻薬王~元化学教師が耐毒スキルと科学知識で迫害されたエルフを救い麻王-まおう-となる~」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054897365656

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