第六章 戦いの四年後
第87話 継承の儀
立夏を少し過ぎた頃。
儀仙堂中枢にある儀龍殿の大広間には、ずらりと人が立ち並んでいた。大広間の至る所に掛けられた、薄い金色の紗の布が風に揺れている。屏風が整然と並ぶ中、奥の几には暁片のかけら、そして暁片の妖が住む折れた剣が飾られていた。
それぞれ冠礼と笄礼を過ぎた
「やっとお前たちに政主と黄龍を引き渡せる」
「「はい、叔父上」」
「見よ、新しき儀仙堂の政主と黄龍である!」
儀仙堂の政主と黄龍が交代するのは数十年ぶりであり、政主と黄龍を継いだ二人に対して人々から歓声が上がった。
そのとき、大広間の奥からまばゆい閃光が
「何だ……!?」
「眩しいぞ!」
大広間にいる人間は皆、波打つようにざわめいた。
そして光が消え、皆が目を開けると、折れた剣があった几の前に青年が立っていた。焦茶色の癖のある髪を頭の高い位置で無理やりまとめているようだ。空青のような色をした直裾袍を身にまとい、袖や裾からはすらりとした手足が覗いている。
青年の濃い色の丸い瞳が、皆を見渡した。その眼差しは無邪気な子どものようでもあり、過去を懐かしむ老人のようでもあった。
「…………お前、もしかして
「久しぶり、
「いいや、そんなことはない。……お前が生きていてよかった」
しみじみと呟くようにそう言った
◆
突然見知らぬ青年が現れたため、儀龍殿の大広間の中は騒がしくなってしまい、政主と黄龍を継ぐ儀どころではなくなった。人目を避けながら、
「それで、どういうことなのですか? 折れた剣が光ったと思えば、あなたが突然現れるとは……」
居龍殿の主となった
「話せば長くなるんだけど、聞く?」
もちろん、という風に
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