第3話 閉じ込められた鳥
初めて言葉を交わしたその後も、何日かに一回は
話ができるのは他の見張りが席を外した少しの間だけだったが、雪が積もるように回を重ねていった。
外の世界について、
話が尽きることはなく、
見たことのない景色も、色も、匂いも、光も、音も、すべて少年の心の中にありありと描けるのであった。
◆
そのようにして一年ほどが経ち、少年はほとんどの言葉を理解し、流暢に話すこともできるようになった。書物の文字も読むこともでき、詩をそらんじることもできる。
しかし状況はさして変わっておらず、依然少年は幽閉されたままであり
「私も外の世界がどうなっているのか分からないのだ、見張りになってからはずっと外に出ていない」
「そうなの?」
少年は初耳だった。確かにほとんどの時間は見張りとして牢の前に立っているが、まさか一歩も出られていないとは思っていなかったのだ。
「そうだよ。閉じ込められた鳥であっても、心は空を羽ばたいているんだ」
「鳥。前に言っていた生き物?」
少年が頭を傾げると、
「そうだよ。鳥は空を飛ぶんだ。小さいやつもいれば、大きいやつもいる。そして、小さいやつは高い声で鳴く」
「昔、小さい鳥があまりにも綺麗な声で鳴くものだから、その鳥を閉じ込めてしまおうとした人間がいた。なんとか捕まえるのに成功して、鳥は綺麗な声で鳴いた。でも、だんだんと弱っていったんだ。だから、惜しいけれど空に放すことにした。すると、鳥は自由に空を飛んだ。閉じ込められたことなど、覚えていないようにね」
「外はどうなっているのだろうな、君はどんな風になっていると思う?」
少年は想像した。光の下の世界を。太陽があり、木々があり、大きな川が流れている世界を。
「僕は――」
その時であった。
「何をしている?」
声の主はもう一人の見張りであった。話に夢中になるあまり、足音に気づかなかったのだ。いや、いつもはやたら大きな足音だったが、気づかれないように歩いてきたのかもしれなかった。
二人に緊張が走る。布をどけて話をしているのを聞かれてしまったため、どう言い訳しようと言い逃れはできそうになかった。
「ただ、話をしていただけだよ」
すると、もう一人の見張りは声を荒げて
「何故見張りが見張る対象と話す必要がある? 何があっても牢の中の子どもとは話すな、目を合わせるな、と命令されただろうが。
ただ、俺らは仕事をすれば良いのだ。こいつを一年見張るだけで、自分に課される刑が軽くなると言われたのに、何故お前はその仕事すらもしない?
お前がこそこそと”何か”をしているのは分かっていたんだよ! いつも顔に貼り付いたような、薄気味悪い笑い方をしやがって」
少年は牢の木枠を握りしめながら、思わず目をつむった。布を戻すことさえも忘れて、少年は歯を食いしばっていた。
もう一人の見張りは気性が荒く、
そして、
少年は、牢の木枠から手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
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