第4話 毟られた羽根
どうやら彼らは”外”に行っただろうことが分かっていた。だが、一向に戻ってくる気配はなく、どんなに少年が希望的観測をしても、
そして少年は、何かのうめき声を見に行って、帰ってこなかった見張りがいたことを思い出した。
あれが、
少年は、急に自分のしてしまったことが恐ろしくなった。
自分と言葉を交わしてしまったから、
悔やむ、という得たいの知れない感情に少年が苦しんでいると、
しかし、少年の喜びもつかの間であった。
彼が立って歩いているように見えたのは、縄で縛られて、後ろに立っている人間に吊られるようにして無理矢理立たされているのだった。彼はよく見ると全身傷だらけで、微笑む余裕すらなさそうだった。
まだ”死”ではない。でも、”死”に近いのは明らかだった。
「おかしいよ! なぜこんな酷いことをするの!」
少年は思わず言葉を口に出し、牢の木枠を拳で叩いた。
すると、
「”厄災を招く子”よ。汚らわしい存在のくせに、そのように話せるようになるとはな。こいつを甘言で惑わしたか? いや、そんなことはどうでも良い。”厄災を招く子”よ、この男の惨たらしく死ぬ様をしっかりと目に焼き付けよ。……すべてはお前のせいなのだから」
自由となった
誰もが、
「私は……問題ない、だから、君は外に、いつか、いつか出てくれ……。本当は、共に行けたら……良かったのだが…………!」
どこをどう見ても、誰が見ても彼は”問題ない”わけではないのに。
「
少年は今まで出した一番大きな声で叫んだ。たとえこの後、見張りに体中を叩かれたとしても、殺されようとも、
「ああ、その言葉を聞くことができただけで……私は満足だ」
「――やれ」
そして
それを見届けた
部屋の外で時折微かに聞こえていたうめき声が次第に大きくなる。
そして、現れたのは生きた人間ではなく、死体であった。
たどたどしい足取りはまるで踊っているかのようで、乾いた皮膚に焦点の合わない目をしている。その口からは言葉にすらならない音が絶えず聞こえている。
一人残された李氏の部下は遠くの方で死した者を操り、今なお動こうともがいている
そのとき、少年は直感的に理解した。李の部下は操った死体に
「危ない! やめろ、鄭蔚文を傷つけるな…………!」
少年の願いむなしく、操られた死体は
息の音がついに聞こえなくなった時、少年の目の前に白い靄がかかったようになった。時の経たぬうちに頬を水のようなものが流れ落ちていった。少し遅れて、今涙を流したのだと少年は自覚した。
前に、涙は悲しいときに流れるのだと
そして操られた死体はあろうことか、
少年の頬に流れているのは、自分のが涙なのか
「やめろ、やめろよ……! なんでこんなことをするんだよ……!」
声がかすれても、それが止むまで少年は叫び続けていた。
閉じ込められた鳥であっても、心は大空を羽ばたいている。だが、もしも外へ出られるのなら、あなたと共に生きたかったのだ。
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