第74話 玉剣山の火事
天弥道に妖鬼が出たのと同じ頃、儀仙堂では玉剣山の一部が燃えるという一件が起こった。
「自然に起こった山火事とは思えないな。ここを見てみよ、人のいた痕跡だろう」
黄龍、
「叔父上。こちらは完全に燃えていないようですけれど……」
付き添いの
「ほう、これは珍しい」
「この死体、人間にしては腕の関節が一つ多いですね。あら、こちらの死体は二丈ほどの身長でしょうか」
怖がることなく、
おなじように死体の山に近づいて見ていた門下生の一人がため息を吐いた。
「
その言葉で、
「そういえば、大会で玉剣山に
「はい。人寄せの霊符に形が似ていましたが、呪部によれば、人を寄せるのではなく、人のいる場所に近づく効果があるとの話でした。元は、見知らぬ土地に迷子になったときなどに使う霊符らしいです」
玉剣山の大会で秋が妖鬼の
「妖鬼の類いが人に近づいても、人に危害を加えるとは限らない。しかし、危害を加えるように命令されていたらどうなる?」
「命令することが可能なのですか? 相手は妖鬼ですよ?」
「いくらでもやりようはあるだろうよ。例えば、音や匂い。鈴を鳴らしたり、香を焚くことで妖鬼を操る。他には、文様だな。最近は廃れているが古くから用いられている手法で、形を組み合わせて複雑なまじないとする。たしか、まだ雪雲閣では玉に文様を彫ったり、外套の刺繍などに文様のまじないが使われているはずだ」
「
「では、人に近づく霊符を貼られた妖鬼が人に危害を加えるように命令されていたとしたら……妖鬼は近くにいる人間を喰うようになる――」
二人の頭の中に、玉剣山の妖鬼の
「叔父上。あの人食い妖鬼の
人を喰う妖鬼の
「十分ありえるな。この火事は、その証拠隠滅を図ったか、それとも」
「――それとも、わざと私たちにこの場所を教えることで、私たちを足止めしているのか……ですかね?」
「問題ないよ。たとえ私たちがここで足止めされても、私たち以外の者は動けるのだから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます