第五章 十年前の戦いの再来

第63話 戦の詳細

 天弥道てんみどうで動く死体の群れが現れたらしい。数は数百にものぼると言う。


 天弥道の周りは儀仙堂ぎせんどう呪部じゅぶによる妖鬼除けの陣が敷かれているため、人の居る地域まで入ってきているというわけではなさそうだ。


 だが、呪部を置いていない天弥道では、いつその陣を突破されるか分からない。政主は剣を取れないため、建物内で指示を行っているらしい。天弥道の周りでは、朱雀が率いる妖鬼退治の門下生たちが討伐を行っているという。


 ちなみに常院楼じょういんろうの”動く死体”を調べた呪部の報告によれば、死体は器にすぎず、死体とは関係のないを狂暴化して入れているため、動いているようだとのことだった。そのような理由があって、動く死体であっても妖鬼除けの陣で守ることができるのだ。


「報告はこれで終いか?」


 棗绍ザオ・シャオの問いかけに、高敏ガオ・ミンが頭を振った。


「いえ。雪雲閣の冷懿と門下生十数人、呪部数名が天弥道にすでに向かっている模様です。また、死体以外にも妖鬼も出ているそうで」


「そうか。少し考えさせてくれ」


 棗绍ザオ・シャオが口に人差し指を当てた。物資の供給はどれほど必要なのか、誰を何人向かわせるか、それは門下生なのか呪部なのか、はたまた黄龍である棗自身が向かうのか。棗はそれを間違えてはいけない。


泉古嶺洞うちからも応援を呼びましょうか?」


 その報告を聞いていた柳聰リウ・ツォンが口を開いた。


「ああ、頼めるか?」


 はい、と柳聰リウ・ツォンが頷いた。棗は立ち上がり、高敏ガオ・ミンに言う。


高敏ガオ・ミンよ、各勢力に以下の事柄を伝えよ。手の空いている者は天弥道を助けよ、しかしその間の守りも怠るな、と」

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