第3話 正体
「今日は私が盆を差し入れてもいいだろうか?」
これで中の生物が人間なのかどうかが分かるかもしれない。地下には見ての通り人との交流しか娯楽がない。褒められたことではないだろうが、謎の生物――その正体を知ることが劣悪な環境の中の小さな楽しみといえた。
水の入った盆と小さな焼餅が載った器を一人で届ける。
「おっと、危ない」
木枠は狭くて盆を傾けるしかなかったが、慎重に運ばなければ焼餅や水がこぼれてしまいそうだ。木枠の間をやっとの思いで通し、布の向こう側に手をのばす。その時、布の向こうで動くものがあった。
「…………もしかして」
「そんな……!! このような子どもが何をしたというんだ……! こんな狭くて暗い場所に閉じ込めるなど、常軌を逸している! 幼い子どもが大罪など起こすわけがないだろう!?」
幸いなことに、見張りは周りにいない。必死になって小声で呼びかけてみるが、返事は返ってこなかった。
嫌な考えが
普段は穏やかな
だが、労役の身である今の
「ならば、せめて……」
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