第18話 儀仙堂の黄龍
同時期、
広い空間に、一人の人間が目を閉じて
長い間、
色素の薄い、
彼が横たえていた身体をわずかに起こし、まわりをゆっくりと見渡して、それから目を伏せた。
「さて、呪部が星を読み、悪しき予兆今まさに来たりと予言をしたわけだが」
「おまえならどうする?
答えが返ってくることはない。静寂に対して棗は薄い笑みを浮かべて、髪を手で払いのけた。
「おまえは答えることはない、か」
その時、こちらに向かって走ってくる足音があった。
「
儀仙堂門下生の
「何事だ」
「
さらに、雪雲閣の使者は普段なら数人でやってくるが、今回は一人で来たとのことだ。こんなに急いで一人で来るのは珍しく、なにかあったに違いない、と門下生の
「ほう、呼びなさい」
すぐに使者は現れた。
「雪雲閣書部、
「遠路はるばるよくぞ来た。さて、問おうか。言づての内容とは何だ?」
「はい、
棗は自身の唇を人差し指で撫でた。
「”厄災を招く子”というのは、この地の伝承にある、生まれたら殺さなければいけないという”あれ”か?」
「はい。城歴李氏の話によれば、”厄災を招く子”は
「暁片、というのは持った者が強大な力を持つという法宝であるな。城歴李氏も力が欲しかったのであろうか」
「そのようです。城歴の地は長年常河の氾濫に苦しみ、李紹成は暁片を手に入れて城歴を平安の地にしようとしたとのことです」
「大体は理解した。よかろう、七日後に儀仙堂にて会合を開くこととする。……雪雲閣は周到であるから、すでに使者は送っているのだろう?」
「もちろんです。すでに
使者の有能さが言葉を交わすだけで滲み出ているため、
「では、城歴李氏の件で会合を開く旨を書状に書けば伝わるだろう。ああ、折角各勢力が集まるのだから、ついでに他の門も呼んで腕の立つ者たちに妖鬼祓いを競わせよ。”大会”を開くことも伝えてくれ」
大会。ここでは妖鬼祓いを競い、各々の修行の成果を示す催しのことだ。黄龍のきまぐれによって数年に一度開催されている。
「ではそのようにいたしましょう。急ぎ、
雪雲閣の書部、
「これが悪しき予兆だろうか?
夕日と同じ色をした
挿絵
https://kakuyomu.jp/users/KanooSio/news/16818093084501965403
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