大会二日目
第34話 剣に取り憑く妖鬼
夜が明け、大会二日目となり参加者たちは皆盛り上がっていた。早朝であるにもかかわらず
建物の中にまで差し込んでくる日差しと濃い影は、まごう事なき快晴であると表している。
「やはり
「いや、
「
数人の門下生は中間発表で成績の良かった者について話をしているらしく、
どうやら、現在の順位は青龍が一位で、朱雀、玄武と続いているらしい。
「
「大会中に襲う奴が悪いとはいえ、白虎は情け容赦ない」
「美丈夫だがあの眼光に見つめられると、誰でも足がすくむだろうよ。怖い怖い」
ひとしきり
大会一日目、常は自分のことで精一杯で、周りの事にまで気が回らなかったため、
先程のどこかの門下生達の話しぶりからして、相当な数の人間が邪魔をしに来たのだろう。大会の順位が低いのも、それが原因であるに違いない、と常は思った。
「そんなに怖い人じゃないのに」
口は悪いけど、と常は独りごちた。秋のことは厳しいと思えども、思っていたよりも優しい。
いつも笑顔を絶やさない
妖鬼討伐の頭ともなれば人々から恐れられるのは必定なのかもしれないが、秋が誤解されるのは嫌だと思った。
◆
同時刻、常とは別の部屋にいたが同じ言葉が聞こえていた秋は、複雑そうな顔をして
「
冷が心配そうに問いかけた。
「………… 剣に取り付く妖鬼が取り憑いたから斬っただけだ」
そう言って秋は牀に倒れるようにして寝転んだ。
昨日の大会中、邪魔をしに来た門下生たちに追われていると、とある妖鬼が出た。それが剣に取り付く妖鬼だった。そして、剣に取り付く妖鬼は秋にとって、とても厄介だったのだ。
その妖鬼は剣に取り憑くと、持ち主の意思に関わらず無差別に人を傷つけようとした。邪魔をしに来た門下生たちが次々と妖鬼によって傷つけられていく。白虎である秋は、たとえ邪魔をしに来た門下生であろうとも、それを見過ごすわけにはいかなかった。
取り憑いた剣と戦ううちに、剣から妖鬼を出さなければ討伐することはできないのだと分かった。剣から妖鬼をむりやり出すために、取り憑いた剣の刃を折ることにしたのだ。
しかし、剣を折ったそばから妖鬼は他の剣に取り憑いて、きりがなかった。十数本ほど剣を折った秋は討伐するのを諦めて、剣から出て行く前に霊符を貼り付けることにした。そして、ようやく妖鬼はおとなしくなったのだ。
この妖鬼が出てから数刻経っていたが、妖鬼は討伐していないため当然討伐数には含まれない。
そのため、秋は他の参加している者よりも討伐数が少なくなってしまった。さらに、門下生たちの剣を折ったことで要らぬ噂がたち、他の参加者から怖がられることになってしまった。
「その妖鬼が取り憑いた剣だが、実はここにある」
そう言って起き上がり、折れた剣をどこからか取り出す秋。鞘ごと布にくるまれており、剣を抜くと霊符が貼ってある。
「えっ、
冷は怪訝な顔をして問いかけた。
「うちの呪部の
満足そうな顔で秋は言った。
雪雲閣の呪部の
秋はたまに土産として、討伐しなかった妖鬼を
冷は妖鬼の取り憑いた剣を遠巻きに眺めていたが、思い出したように秋に話しかけた。
「そういえば、昨日は随分と濃い霧が出ましたね」
妖鬼の剣を大事そうに布に包んでいた秋は、興味深そうに冷の顔を見た。
「確か、
「はい。その霧について報告したいことが一つ。……それが、うちの門下生の
「…… まるで誰かが仕組んだように、だな」
呟くように発せられた秋の言葉を聞いて、昨日、
”誰かの思惑があったと思うのだよ”という
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