第58話 鍛錬の日々
季節は小暑となり、日差しも眩しく温風が吹いてくるようになった。
今の時点で暁片について分かった内容は、以下の通りである。
暁片は帝に作られて以降、度々戦の火種となった。まじないが施されているため、その力を利用しようとする者が多いのだという。
法宝暁片が人々の前によく知られるようになったのは、今から約三百年前。
暁片を持つ人間が現れ、暁片を巡り大きな戦となった。それを止めたのが、棗という姓を持つ青年だったという。
そして時は流れて今から十年前、
噂により他の門から襲撃されて、死傷者は二百人にものぼった。
そして現在、“厄災を招く子”と呼ばれる少年が現れ、暁片を導くとされている。
「まさか、僕のことが書いてある書簡もあるなんて―― 」
「
ぼうっとしている
「……はい、師兄! 」
常は転がる勢いを利用して素早く起き上がり、秋に教えてもらった足さばきの鍛錬を続けようとした。
「心此処にあらず、だな。今日はここまでにしておこう」
常が暁片の記憶を見てきてから、考え込むようになったのを秋は感じていた。真実を知ろうと思うのは良いことだが、妙な危なっかしさも覚える。
「まだ僕は鍛錬できるよ」
「そのように身が入っていない鍛錬なら、行わない方がましだ」
そうは言いつつ、秋も暁片のことを考えてしまう。常が見てきた記憶についての話を聞かせてもらってから、真実を探求しようとしてしまう。
そのとき、どこからか真っ白な
「
常と秋が空を見上げると、玄郭に向かって何羽もの紙鳥が飛んできているのが見えた。それぞれの紙鳥は違う色であり、差出人が分かるようになっている。儀仙堂からと思われる明黄色の紙鳥が数羽、玄色の紙鳥が一羽、他にも数羽、これだけ多くの連絡が来るということは、なにかあったのだと分かる。
肩にとまっている紙鳥が一枚の紙に戻るように開かれていき、ひらひらと落ちてくるのを秋が手で受け止めた。
その中に書いてあった文章を読んだ秋は、思わず息を呑んだ。紙を持つ手がこわばり、今にも握りつぶしそうな勢いだ。
「ねえ、師兄。どうしたの?」
「いや…… 」
「もしかして、僕に関係すること?」
常がじっと秋を見つめている。常はこのごろ鋭くなった。
「…… ここに書いてある内容を聞けば、お前は心を痛める可能性がある。それでも聞くか?」
常は深呼吸をして聞いた。
「うん。僕に関わることなら、知っておきたいんだ」
「ああ。…… 分かった、話そう」
秋が言葉を探すようにしばらく沈黙してから、口を開いた。
「刑罰を受けていた
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