第101話 異物
「なんかウチらが集まりに参加したいって言ってるんだけど、どうする?」
「社員が混ざるとウザくない?」
「本人は社員同士よりアルバイトたちと仲良くする方が好きっつってんだよね」
「人間的には別にだけど社員ってのがねー」
「どうする?」
異動していた1人の社員が私たちの宅パの話をどこからか聞いたようで自分も混ぜてくれないかということらしい。
全員の意見としては喋ってて面白い人だが肩書きが社員なので、アルバイトだけで集まる会に混ぜることだけに悩んでいた。
いつもアレコレとうるさい社員がいないからこそ楽しいという所があるのだ。
「でもまぁ、春に社員になったばっかりらしいしまだ業務もアルバイトと変わりないよねー」
「あー、だから社員と馴染めないってことか」
「でも社員になったならちゃんとアルバイトとは線引きしないとダメなんじゃない?」
「仕事は仕事、遊びは遊びで切り分けられるのかってところだよね」
「じゃあ1回だけ呼んでみる?」
こうして一旦誘ってみるか、という落とし所になった。
仕事が終わり各々うちに集まってくる。
一応、歓迎会という形で開催した。
パリピママ友はお酒を飲まないのでいつも運転手。集まったメンバーをいつも買い物がてら引き連れ解散後は全員の家まで送り届けている。姉御肌、で辞書をひいたらパリピママ友の説明があるんじゃないかと思う時がある。
次男はパリピママ友の次女と同じ保育園になったのでより一層に仲良しになっている。
くだらないことでゲラゲラと笑う子供たち。
今日はもう一度食べたい手料理ランキングにより上位だったサイゼリヤのミラノ風ドリア風を用意した。正直、本家より美味しいと自負している。(本当の本家は横浜の老舗ホテルだが)
あとは自分が食べたい料理を勝手に作る。
たこ焼き器でアヒージョとホットプレートでチーズフォンデュにガーリックポテトは揚げた傍から子供たちが食べ尽くすので外せない。
お酒が入れば、何だかんだと楽しいものだ。
社員もアルバイトも隔てなく腹を抱えて笑っていて、あっという間にお開きの時間になる。
「また、誘ってほしいなぁ」
「いいよねー!?」
「いいよ、いいよ!」
「やったー!嬉しいー!」
「社員だから会費は多めで」
「えー!!」
「そうだ、そうだー!」
急な一致団結に負けて上乗せされた参加料を払い観念する。
新しいメンバーが加わってから3ヶ月か4ヶ月、
それくらい経った頃。
今日はうちで宅パをした日だった。
パリピママ友が8人乗りの車にみんなを乗せて帰っていき、子供たちとお風呂に入って寝かしつけた頃、誰かからLINEがきた。
開いてみると例の社員からだった。
社員寮のアパートはうちから近く、いつも自転車通勤でうちに集まる時も自転車で来るので送迎車には乗らない。
その社員はお開きの後、1人でうちに来た。
どういった理由で何故お開きの後にうちに再び来て、家にあげたのか、私は覚えていない。
覚えているのは皆で片付けをしてパリピママ友が送って行って解散して子供たちとお風呂に入って寝かしつけた頃にLINEがきて気付いたら体を交わしていた、ということだけだ。
私は決して好意をもっていたわけではない。
向こうは持っていたのかもしれないがわからない。体を交わすことに何の抵抗も覚えなかったから記憶にないのだろうか。それとも忌々しいから後になって記憶から消去したのだろうか。
目を閉じ、記そうとしても、出てこない。
何の映像も、出てこないのだ。
辛うじて思い出せるのは、交えたであろうその後の気まづさと異物を取り入れた感覚だけ。
1人、暗い部屋でボーッとする。
これは不倫というやつだろう。
え?私が、不倫を、した?
私が男を簡単に受け入れたというの?
でも、そういうことなんだろう。
なんで?
私も根本的なところは母みたいに自分が楽しければそれでいいというのを受け継いでいるのだろうか。
酷い自己嫌悪に陥った。
起きてくる子供たちにどんな顔で挨拶をすればいいのだろう。
そして、その感覚を残したまま最悪のタイミングで次の日カツオが家に帰ってきた。
休みだから、子供に会いに来たと、突然に。
どの面下げてなんて、もう言える立場にない。
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