第60話 息子たちの育児 5
長男は1歳2か月でやっとまともに歩けるようになった。歩いたと思ったら今度は目が離せないので泣き喚く次男を抱きつつてんやわんやだ。
ちっこい前歯が生えてきて、にこ〜っと笑うたびに見えて可愛い。ベロも丸くてムチムチ。
あまりグズったりもせず、夜は寝たら朝まで起きない。夜泣きナッシンGood!!
対照的なのはコヤツだ。
一体何をしたら少しは静かになるのだろう。
一か八か5万円以上する自動のゆりかご的なものを買ってみた。
……そのうちいつかね、使う機会がくるよね。
人肌恋しいレベルではない。まさしく異常。
食事もろくにとれないので、夕食時は私以外の家族が先に食べ次男を抱っこし代わりに私が
ご飯を食べ、入浴の準備をしてお風呂場に連れてきてもらうチームプレーでの流れ作業。
その頃、泣き止まないことに加え両腕の皮膚が
壊死したように膿んでズルズルになっていた。
皮膚科に行き軟膏を処方してもらい、膿を吸い取りつつ更に引っかかないようガーゼと包帯で
保護してあげていた。もしかしたら腕が痒かったり痛かったりして泣いているのだろうか。
赤ちゃんは喋らないからわからない。
夜は私と長男と次男の3人で川の字で寝る。
長男の寝相の悪さには目が点になる。
なぜ枕に枕にされてるのだろう。
夢遊病のように急にウロウロしてバタりと寝るのも気付けないと脛に頭突きをくらう。
そういえばカツオの弟が夢遊病が酷くて夜中に
いきなり起きて飼っているウサギのうんこを食った話を思い出した。きっとチョコ○ールだと思ったのだろう。
すごく似ているから仕方ないね。
次男のウィリアムズ症候群のことを知ってから
私は不安で不安で仕方なかった。
大人しくなった時もしかしたら心臓が止まっていたらどうしよう。泣きすぎて心臓に負担がかかったらどうしよう。
何をしていてもどうしようと、どうしようと、消えやしない不安と戦っていた。
産後うつはどんどん酷くなっていく。
孤独だから産後うつになるわけじゃない。
周りに誰がいようと、なる時はなるのだ。
人を巻き込んでしまうくらいならいっそ1人で抱え込んだ方がマシなんじゃないかと思う。
引越し前に1度、神奈川県の病院へ診察へ行かなくてはならなかった。
ウィリアムズ症候群について調べてみる。
全てでは無いが合致する点はある。今はまだ乳児なのでこれからの成長と共に合致する点は増えていくかもしれない。
次男の病気は治らない。付き合っていくしかない。右も左もわからないけど受け入れた。
でもある日の夜、長男が静かに寝ている横で
私は次男の首に手をかけていた。
ハッとして手を離したのは、手をかけた時あまりに細くて弱々しくて少しの力で折れてしまいそうな首が怖かったからだ。
私の小さめの手でも充分に片手でおさまる。
……こんなこと誰にも言えない、、、。
……自分の子供を実際に殺そうとしたなんて。
強烈な自己嫌悪に苛まれる。
可愛くないわけじゃないのだ。
長男も次男も等しく可愛く愛している。
しかし、それと反比例する感情が夜になると
やってくる。夜がくるのが嫌だ。
もうすぐ生後2か月が終わる。
顔は相変わらずカレーパンマンだ。
まだ首はすわらない。ずっと新生児の見た目。
20時間泣いていた頃に比べれば1時間ほどは
静かな時間が増えたような気がする。
でもぜっっったいにベッドや布団では寝ない。
常に抱っこだ。
大人しい時に私がトイレに行きたくなり祖母に抱っこを代わってもらう瞬間、怪獣覚醒!
長男はNHKの子供番組をニヘニヘ観ている。
このニヘニヘももう少し物事がつくようになったら、次男にばかり手がかかって我慢をさせたり寂しい思いをさせてしまうかもしれない。
シナチクみたいな次男と私はそろそろ戦隊モノのように合体しそうだがなにも強化されない。
昼間はなるべく長男と遊ぶ時間をつくる。
歩けるようになったので公園に散歩へ行く。
実家の周りには公園がたくさんある。
冬の滑り台はおしりが凍りそうだ。
長男が楽しそうに遊んでいる傍らで爆泣きしているやつがいる。
次男にとって公園は天敵なのだ。
ウトウトし始めた頃に子供の声が聞こえようものならスイッチオン!!!ギャオー!!
本当に火を吹けば合体した意味もあるのだが。
次男は聴覚過敏で特に子供の声が苦手である。
そして私は産後うつの影響なのか、次男が泣きすぎるからなのか、いつの間にか家族とマイちゃん以外の人を避けるようになっていた。
公園に他の親子が来たら逃げるように帰る。
長男には同じ年頃の子とコミュニケーションをとってもらいたいと思いつつも、私の精神がもたない。また自己嫌悪に陥りながら家に帰る。
明後日は神奈川県の病院に行く日だ。
きっとベビーシートでずっと泣くのだろう。
よくそんな体力があるなぁと関心する。
カツオには仕事を休んでもらった。
やはり夫婦だし親子だからきちんと次男のことは理解しておかないといけない。
でもたまーにうちに来たかと思えば他人事のように抱っこをしてあたかも育児をしているように振る舞う。四六時中泣いていて参っていると言っても私なら大丈夫だろうと言う。
なので義母もこんな事になっているなんて知らなかったらしい。それは数年後に知った。
そういうことにイライラする奥様は世の中に
星の数ほどいるに違いないと思っている。
今日もまた夜がきた。
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