第61話 病院へゆく

……なんて長い道のりなんだ、、、



次男の泣き声はもうBGMに近い。

長男は手に持ったおもちゃで遊んでいる。

ナビを頼りに病院に到着し、まずは長男のオムツを替えにトイレに向かう。

トイレから戻るとボランティアの方々が折り紙で作った指輪や腕時計などを配っていた。

【常連の子供】と楽しそうに話している。

こども医療センターというだけあって、本当に子供だらけだ。次男がギャオスになっていても

全く違和感がない。すごい。


ここで受診をするのは遺伝科、循環器内科、

眼科、耳鼻咽喉科、内分泌代謝科だ。

初診の受け付けを済ませて院内を散策する。

赤ちゃんでも安心して遊べるスペースには必ず

ボランティアさんが1人はいる。

体を使って遊べる場所、ゆっくり本を読める

ミニ図書室、ちょっとしたイベント、季節に合わせた装飾に、入院児の工作展示、外のベンチの池には亀が数匹日光浴をしている。

そして何より通院で疲れるはずなのに意外と親御さんたちがゆっくりした雰囲気で座ってる。

……そうか、大なり小なりここにいるみんなが

色んな不安や葛藤と戦う仲間なんだ。


眼科と耳鼻咽喉科は今日診察を受けて大きな問題がなければ近くのクリニックで間に合うらしいが、循環器内科、内分泌代謝科、遺伝科は

毎回マストで通わなくてはならない。

どうやら通院の日は6時間くらい病院に居ることになりそうだ。


まずは安定の採血。

でもここはこども医療センター!

大人しくするのが難しい子供はバスタオルで

ぐるぐる巻いて簡単に拘束する。

私が頭を抑える。

拘束から出された右片腕から採血をする。

止血が出来たら医療用シールに手書きで様々なキャラクターが描かれているものが選べる。

これは嬉しい。

先に採血から出てきた男の子も泣いているのにシールを選ぶのは必死だった。その光景に親も

看護師さんもほっこりしている。


次に安定の心電図と心エコーだ。

心電図は何とか、見れた、らしい。

心エコーの部屋は暗くするのだが、ベッドの傍らにDVDプレーヤーと何種類もの幼児向けDVDが並んでいる。検査に少し時間がかかるのでその間大人しく出来るような工夫だ。

……早くアンパン様を理解できるようになれ!


次にレントゲンを撮る。

パッと脱がせてパッと渡しパッと戻ってくる。

撮影時は一旦外で待つのだがレントゲン室にも

幼児向けの映像が流れていて立って撮影する場合は大人しくいられるようになっていた。

……早くアンパン様を理解できるようになれ!



その頃、長男とカツオは病院内を非常に楽しく探検しているようだ。ちゃっかり売店にまで行ってやがった。なんか腹立つな。

探検中、長男は亀に夢中だったようだ。

……ウミガメ顔で生まれたからだろうか。



循環器内科の待ち時間が半端ないので、まずは

遺伝科から呼ばれた。改めてウィリアムズ症候群の説明をされた。

「インターネットに記載されていることが全てではないですよ。個人差はウィリアムズじゃなく誰だってもちろんあります。2万人に1人の確率と言われていますが、私は今は1万7千人くらいに1人の確率で生まれてきていると考えています。年々、増えているということですが原因はわかっていません。治療法も今のところないので上手く付き合っていきましょう」

長い時間かけて先生と話して、少し安堵した。

後から知ったがウィリアムズ症候群の先駆者の先生のようだ。


次に内分泌代謝科に呼ばれる。

こちらも成長ホルモンなどの大切な話だ。

ウィリアムズ症候群の特徴として低身長があげられる。私の身長は150センチ。あると思う。

「もし希望されるようでしたら成長ホルモンの

注射をすることも出来ます。よく、糖尿病患者さんが注射するようなあれです。なので注射はお母さんがすることになります。こちらはあくまでこういうものもあるよ、というお話なのでご家族で相談して次回の診察で決めましょうかね」

……高収入高学歴高身長。そんな時代もあったらしいが、既にコヤツはひとつもない。高身長だけ(ホルモン注射をしてもいって160センチ程らしい)手に入れてもなんの意味があろうか。

一旦、判断は持ち帰りにしたものの私は診察室で既に打たないと決めていた。身長よりも大事なことは【自立に向けて何をするか】だ。


眼科では逆さまつげを相談した。

上も下も逆さまつげなので常に目やにっぽくて

ぬるま湯で絞ったガーゼで吹いている。

目も気になって泣くのかもしれない。

「成長と共に瞼の腫れぼったさが薄くなってきたら良くなるかもしれませんが、酷くなるようでしたら手術をしましょう」と言われた。

……そしたら保険で二重整形じゃん!と思う。

なんて最低な母親なんだ。


耳鼻咽喉科では特に異常はみられなかったが

「中耳炎になりやすい体質のようですので、耳を痛がったり熱が出たりしたら近くの耳鼻科で点耳薬を処方してもらってください。聴覚過敏の特徴もあるようですので、生活に支障が出るようでしたらヘッドホンで音を遮断するということも考えておくのもいいかもしれません」

……なるほどさっきの男の子みたいな感じか。


最後にやっと循環器内科に呼ばれた。

……腰が砕けそうや、、、。

カツオと長男と合流し、長男はベットに座り置いてあるぬいぐるみやおもちゃで遊んでいる。

先に言うと、

・大動脈弁上狭窄症

・末梢性肺動脈狭窄症

この2つの心疾患はウィリアムズ症候群とほぼほぼセットのようだ。

詳しく検査をするために股の付け根からカテーテルを挿入し造影剤にて検査を必要があると。

またも入院検査だ。

しかし、ここはこども医療センター!

子供を預けて入院ができる。

引越しが間近なので、その後に検査入院することとなった。

少なくともバルーン手術は必要になるだろうと説明される。ずっと泣くので心臓に負担がかからないか、運動制限はあるのかなどを聞いた。

今のところ緊急性は無さそうだが造影剤で検査してから改めてお伝えするとのこと。



一通りの受診が終わり会計へ向かう。

……めちゃくちゃ疲れた、、、。



実家に帰り、問答無用で夜がくる。

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