第62話 息子たちの育児 6

長男はパッと見、3頭身に見える。

1歳児は膝くらいの高さしかないしネジ巻き式のレトロおもちゃみたいな動きをする。

むちむちしてて相変わらずハムみたい。

よくわからない宇宙語もたまに話す。

ほぼ母音で形成されている。

さくっと行った公園から帰ってきてお昼ご飯を食べたらスヤスヤと眠ってしまった。


立った私に抱かれ揺られ次男も寝ている。

……なんか、いける気がする!!!

「ちょっとここに寝かせてみる」と祖母に言う。

「!!どうなるかしら!!」小声でドキワク。

そおぉぉぉぉぉっとソファーに、移していく。


(2人の心の声)


!!成功ぅーーーーーーー!!!!!!!


音のない拍手を2人でする。

すかさず写真を撮る。もちろん無音設定だ。

これは人類が火星に移住するくらいの歴史的瞬間であった。

そしてその歴史的瞬間は10分で終わった。


たかが10分、されど10分。

私にとっては希望の時間だった。


夜はやはり泣き喚くので精神的にくる。

しかし思いついた。

私がベッドになればいいのではないか?

抱っこしたまま座って寝るよりも、私が仰向けになって横になり次男はうつ伏せで私の上になれば寝るのではないかと考えた。

今までは座ることすらギリギリ許される程度だったが、今は座ることはだいぶ許容された。

次のステップに進もう!

縦向きに抱っこをしてまず寝るまで耐える。

寝てくれたらソファーではなく布団に座る。

座らせてくれたら無い腹筋をどうにか駆使して

介護用リクライニングベッド並の遅さで横になっていく。

それで泣かなければ成功だ!


何度かバレて失敗した。

しかし!キサマがそうくるなら私もめげんぞ!


成功した。


こうして私は重苦しいものの横になって眠れる時間がすこーーーーーし出来たのである。

歴史的瞬間を迎えても泣くことは泣く。

めちゃくちゃ泣く。産後うつは治らない。



ある日、湯上りの次男の体を拭いていたら

鼠径部(股の付け根)がポッコリしていることに

気付いた。

「なんかここ、ポッコリしてない?」と家族にも

見てもらったら、祖母が「それ脱腸じゃない!」と言った。「脱腸?おしりの穴から出るんじゃなくて?」とりあえずスマホで調べてみたところ、

鼠径ヘルニアの可能性があった。これもまた

ウィリアムズ症候群の合併症に多いようだ。

次の日、市立病院に診察に行ったところやはり鼠径ヘルニアで、手術が必要となった。



手術は無事に成功したが、問題は他にもある。

ここは6人部屋だ。

個室料金は自費なので仕方なかった。

うちの次男が寝たと思ったら他の子供が泣き、

つられてうちのが再び怪獣化する。

「はぁ~ぁ…」

どこかの部屋からため息が聞こえる。

……すみません、すみません、すみません。

……お願いだから静かにして!!

鼠径ヘルニアの手術は難しいものではないので

入院は1泊2日なのだがその1泊がまた私の精神を削っていった。



そんな状態で実家から自宅に戻った。

引越しの準備があるからなのだが、これに関しては無問題。

なぜならカツオは配達業の前まで引越し業者で働いていたので、荷造りや搬出入に関しては

芋虫でも人間でもなくアリになる。

直前まで使うものは別としてあっという間に荷造りが終わる。ダンボールも中身の量や高さに合わせてカスタマイズしている。

……体を使う仕事だけは向いているんだな。


そして地元に別れを告げ、神奈川県へ向かう。

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