第57話 息子の育児 2
「またおちんちん丸見えだった!!」
マイちゃんに発表し、爆笑する。
長男もそうだが次男も隠す気がさらさら無い。
いつもエコーでよく見える位置にお腹の中で
待機しているとしか思えない。
とはいえ名前が決めやすいのは助かる。
ゴロゴロ出来るようになって楽しそうな長男に
「おなまえなにがいいかなー?」と聞いてみる。
この子が穏やかそうだから2人目は元気いっぱいヤンチャ坊主な気がした。
思い浮かんだのは、海の水面に太陽の光が反射してキラキラ輝く光景。
よし、決めた!
もう【お腹の赤ちゃん】は卒業。
ヨダレをだらだら垂らして遊んでいる長男に名前を伝える。もちろんわかっちゃいねぇ。
赤ちゃん用品買い足さないとなぁ。
家のお金の管理はカツオがやっていた。
別に任せていた訳ではないが、給与の振込が
そっち名義なので引き落としやら支払いやらを差し引いた分を家のお金として渡してもらっていた。でもお金の管理が大変なのか面倒なのかわからないがやってくれないかと言われた。
断る理由もないので引き受ける。
引き受けたのはいいのだが、口座引き落としの額が多い。車のローンが…2つ?
今乗っているのは軽自動車だけだ。
「これ、何の引き落とし?」
「あー、それ前乗ってた車のローン」
「前の車どうしたの?」
「新車で買って色々いじってあとはホイール履き替えて完成ってところで盗まれたんだよね」
「……はい?」
「朝、駐車場行ったら車無くてフリーズした」
「いや、そういうことじゃなくて。そういうのって共有しておくことじゃないの?」
「言ってなかったっけ?」
……死んでくれ。
「俺のシーマ今頃どうなってんだろー」
「バラされて海外に決まってんでしょ!」
「えー!そうなの!」
「そうなんだよ!!!!!」
「シーマ見つけたら俺のかもしれないから一応鍵をピってやってたのに!」
「そんな鍵捨てちまえ!!アホ!!」
軽自動車のローンが月2万円。
うんこシーマのローンが4万円。
うんこシーマのローン残額約400万円
(シーマに罪はありません)
……今すぐコイツの生命保険を見直そう。
「あとさー、この和彫りが途中だからそのうち完成させたいんだよねー」
……うん。今すぐ殺す。
「あのさ。刺青を入れてることは自己責任だから何とも思っちゃいないけどさ。今この状況でよくそんなこと言えるね。一生そのままでいろ」
「この鯉のデザイン思い入れあるんだけどなぁ」
「私にも子供にも無い。他に黙ってることあるでしょ。この前お義父さんと何話してたの?」
「あー、22歳くらいのときに車で煽ってきたガキをボコボコにして裁判しててそれの示談金がたぶん200万くらいになるんじゃないかって」
……殺しても殺し足りねー。
「ということは、あなたは前科持ちなのを隠して私と付き合ったあげく妊娠をさせたクソ野郎ってことですね。わかりました」
「本当に朝イチで警察くるんだよ!マジでビックリした!」
「お前にビックリだよ」
「あと、3年くらい裁判やってるから弁護費用もあるんだった」
……殺人事件のほとんどは衝動的なものだ。
「弁護費用も慰謝料もお義父さんもしくはお義母さんに払ってもらってください。あなたの問題なのでうちの実家は介入しませんから」
……私も朝イチで警察に捕まるかもしれない。
それなりに楽しくやっていた生活はその日を境にカツオが家の中にいるだけで鬱陶しくなり、
どのタイミングで離婚しようか考えた。
それでも平和な時間はある。
長男がハイハイをするようになった。
と、いっても何故かバックしていく。前に進まない。手と足の出し方がわからないのか。
なんて面白いんだ!近付こうとしているのに遠ざかっていき、泣く。面白い!
前に進むハイハイが出来るように遊ぶ。
掛け持ちのないカツオが帰ってきやがった。
「ただいまー」
「おかえりー」
……帰ってくんな!
「俺、考えたんだけどさ」
「何も考えないでください。働いてください」
「いや、ちょっとマジで仕事のこと」
「...なに?」
「俺、バスの運転手になりたい」
「...大型二種免許はお持ちなんですか?」
「これから教習所通って取る!」
「...どこにそんなお金があるんですか?」
「俺のお小遣いを免許に使う!」
「初期費用を投資して今かけ持ちして仕事するより給料は多くなるんですか?」
「ほら!ここのバス会社に面接行こうと思う!」
「最後に聞くけど、バスの運転手になるのがあなたの夢ということですか?」
「うん。そう!」
「じゃあ死ぬ気で頑張ってください。お金はいつも通り稼いできてください」
「よっしゃー!」
合間を見つけて教習所に通い、無事に大型二種免許を取得した。
そして希望のバス会社に面接に行く。
結果は、【不合格】!!!!!
……そりゃ落ちるだろうな。
私は受かりゃしないと思っていた。見た目もそうだし受け答えもまともに出来ないやつが県内で1番規模の大きく厳しいバス会社に受かるはずがない。しかし、コイツは不合格になったのを黙って他のバス会社の面接にも行っていた。
そこのバス会社の結果は【合格】!!!
……全然よろこばしくない。
なぜならそのバス会社は【県外】だからだ。
コイツ、正真正銘の馬鹿なんだなって思った。
家族会議。
「あのさ。始発のバスを運転しなきゃいけないのにどうやって通う気ですか?最終バスを運転してどうやって帰ってくる気ですか?オールでもする気ですか?何のために家に帰ってくるんですか?私を中途半端に起こすためですか?
あと、2人目の出産も控えてるんてんすけど」
「引越しして俺が先に向こうで働く」
「単身赴任ということね。じゃあ引越し費用はどうするんですか?あなたの都合だからあなたの両親が工面してくれるよね?」
「話はしてある!」
……うん。期待は全くしない。
私の実家にて家族会議。(カツオ排除)
かくかくしかじか。
車のこと、裁判のこと。寝耳に水だ。
先に知っていたら付き合いもしなかった。
両親だって娘を嫁にやらなかっただろう。
しかし、考えるべきは2人の子供のことだ。
「まぁあのバス会社は受からないだろうね。どう考えても」と、母が言う。
「そうだなぁ」と、父も言う。
カツオは単身の部屋を借りて、私は今の家を
解約して実家に戻るかという話も出た。
「うーーーん」、、、頭を抱える。
「もうさ、パパが引越し費用出してあげれば?」
ママが提案する。
「そうするかぁ。じゃあついでに良さそうな家も見といてあげる。そのバス会社どこら辺なの?」
パパが承諾する。
「ここの営業所に配属されるらしいよ」
「場所も確認して住みやすそうな所みてみるね」
……またうちの実家か。
うちの実家はこういう時にどこからお金が出てくるのか不思議だ。
両親共働きとはいえ、娘夫婦にかけているお金はもう何百万になっただろうか。
……こんな奴と結婚してスマンと思っている。
孫が出来て両親は少し柔らかくなった。
長男は立派にハイハイが出来るようになった。
畳んで積み上げたタオルに突進するのが好きで
私は何回も畳み重ね直してあげる。
そして今は取り込んだ洗濯物のTシャツに絡まり抜け出せず怪訝な顔でこちらを見ている。
助けてあげる前に写真をパシャリと撮る。
そして私が畳んだ洗濯物を片付けに行っている間、ガタンッと音がした。
キッチンへ行ってみるとそこには全身びちょ濡れベタベタ甘酸っぱい匂いが充満しながら
床をぺちゃぺちゃしている息子がいた。
……あ、、、自家製梅シロップが、、、
シロップは全て床の泡と消えた。
ベタベタモンスターが床を這いずりまわり更に掃除する面積を増やしていく。
とりあえず洗濯カゴの中へ確保する。
カゴごとお風呂場に行き今日は早めの入浴だ。
……その後、床掃除に小一時間かかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます