第10話 小学生 3

「学童、辞めたい。」

ポソっと母に言った。


母も私が学童へ嫌々通っていることはわかっていた。決定的なことは知らないが。


学童をすぐに辞めた私は鍵っ子生活となる。

そして安全のために約束事をした。


①外に出る時は兄と一緒に行動すること

②兄が居ない時は家から出ないこと

③ピンポンが来ても出ないこと


大抵、②だ。

友達の家に集まりゲームをしているのだろう。

そうなると私は18時まで家の中を1人で過ごす。

母の迎えは19時だったが祖母は18時頃に帰宅するので学童のときより1時間も早く孤独から解放される。さらに祖母は甘栗やフルーツなどのお土産を持って帰ってきてくれたりした。

鍵を開ける音、階段を上ってくるのを待ち遠しくのぞく小さな私。


祖母かと思いきや兄の時もある。

まぁ良いだろう。


ちなみに3つの約束を破ったことはない。

バレやしないかもしれないが、しない。

破ったらどうなるか想像に容易いからだ。

わざわざ自分から鬼やら般若やらを召喚する必要は無い。


私の家では平日は母が夕飯を作り、休日は父が夕飯をつくり、普段の掃除洗濯は祖母といった感じで分業されていた。

と言っても父は日曜日しか休みがないので

母としては日曜日が唯一、何を作ろう呪縛から解き放たれる。


私がまだおんぶ紐の頃から母は働いていた。

理由は、自分が最低限維持したい生活レベルを保つ為だそうだ。決して高い水準ではない。

至って困らない程度、長期休暇で旅行に行ったりもしていた。


だが、如何せんヒステリー気味なのだ。

神経質とも言える。

呑気な兄以外、皆わかっていて行動していた。

母の言い分としては、父が私たち兄弟を怒らないから私が怒り役をやらないといけない。私だって怒りたくないのに!とのこと。

10割父のせいにしているが、母の気質や性格の問題もあるだろう。


さらに母は規則とか常識とかマナーとか謎のルールが多く、とにかく人からどう見られるかという点ではかなり厳しかった。特に私には。


プール教室に行ってみたいと言ってみれば

女の子なのに肩幅が広くなるからダメ!

正座をしていたら足が太くなるからダメ!

ついでに体が歪むから足組んじゃダメ!

自販機でドデカミンを買ってきたら子供が飲んだら眠れなくなるからダメ!

電子レンジが不思議でずっと見ていたら頭がクルクルパーになるからダメ!

コーヒーを飲んでみたいと言ったら子供が飲んだら頭がクルクルパーになるからダメ!


お兄ちゃんと一緒にそろばん教室に通いな!

ヤダ!!!


人のことを天邪鬼というのはやめてほしい。

水泳で金メダルを獲った女性にスライディング土下座をしてほしい。

電子レンジから楽という恩恵を受けている筈なので関わっている人にスライディング土下座をしてほしい。

そしてコーヒー頭クルクルパー説はコーヒーの消費が早くなるから、という理由だったらしいのでスライディング土下座をしてほしい。


そうして他にも多々ある謎ルールに則り生活をしていたため今でもコーヒーは飲めないし、

エナジードリンクも飲まない。

もちろんクルクルパーになるのが怖いのではなく因果性があるのか解らないが【カフェイン】に弱い体質であることはわかっている。


幼少期から顔色を伺うことを覚え、徐々に母のマインドが私の中に組み込まれていった。

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