第11話 小学生4

私は2年生まで指しゃぶりをしていた。

単なる癖だと思う。


母が「恥ずかしいから止めなさい!」と言うので恥ずかしい行為なのはわかっていたから外では絶対にしなかった。なので帰宅して手を洗ったそばから餓鬼のように指をしゃぶっていた。指しゃぶりをしながら人差し指で鼻を触るのがセットだったので、やめるまで親指にタコが出来て鼻はピカピカに光っていた。


止めたきっかけは自尊心、つまりプライドだと思う。担任の先生の前でふと指しゃぶりをしてしまったのだ。

「あら、まだ指しゃぶりしてるのね」と微笑む。

ハッと我に返った。

私としたことが人前で自ら羞恥を晒した。

こんなことあってはならない。

それが私の最後の指しゃぶりだった。


そう、私は無愛想で寂しがりでプライドが高いのだ。


無事にタコと鼻のピカピカも治ったが

母は暫くの間、指しゃぶりをしていた私の

鬼の形相を真似して笑っていた。

止めなさいって言ったのに止めたら止めたで

弄ってくる。

後にその時の感情を知る。


「ウザイ」


3年生と4年生の時に担任となった先生は

兄が3年生と4年生の時の先生と同じだった。

私はこの先生との出会いが無ければとうに人生に絶望し終わりにしていたかもしれない。


先生は私の気質や本質を見抜いているような気がしていた。

笑う時は優しい笑顔で、叱るときは落ち着いた声で、上げ下げがなく落ち着いているけれど

この先の人生で困りそうなことに関してはしっかりと教育をする。親に対しても。


母はこの先生が苦手だった。

何故なら兄がポンコツだったからだ。

毎日毎日毎日Everyday忘れ物をする。

持って帰らないといけないプリントを持って帰らず、持っていかないといけない物を家に忘れてくる。Everyday!Hey!


私は禁止されていた置き勉を堂々としていたので家に忘れるということは無かった。

忘れて隣の人に教科書を見せてもらうくらいなら置き勉で怒られた方がマシだ。


歳の割に白髪が多かったが私はその綺麗なシルバーのおカッパ姿が大好きだった。

いつまでも眺めていられる。


「47都道府県テスト、100点とるまで毎日放課後に再テストやるからね。」


……はい。


私は3日連続1人残って再テストをしたのであった。

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