第9話 小学生 2

「僕も遊ぶの混ぜてくれる?」

知らない男の人が私たちに話しかけてきた。


隠れんぼの鬼を決めるために5、6人で

じゃんけんをしようとしていた時だ。

みんなで顔を見合わせ「いいけど」と答える。


じゃん、けん、ぽん!

私は勝ったので隠れる側。

のはずなのに、男は「僕と一緒に鬼をやろう」

と言ってきた。

みんなで顔を見合わせ「わかった」と答える。


何で私は勝ったのに鬼なんだろう。

しかも鬼は1人なのに。

そんな疑問は数分で解決された。


「じゃあ数えるからみんな隠れて!」

何故いきなり来たお前が仕切るんだよ。

「じゃあ僕らはこっちに行こう!」

どこ行くんだよ。


連れていかれた場所は外にあるトイレ。

古いトイレなので扉が格子状になっていて

完全な個室にはなっていない。


「服、脱いで!」

は?

「パンツだけでいいから!」

は?

「早く!」

は?

男は勝手に服を脱がしにかかってくる。

私はとても冷静に「いやだ」と行って出た。

今思えば出られたのは幸運だったと思う。


先生に言わなくては。先生どこだろう。

探しているうちにKちゃんが男に連れ込まれてしまっていた。


「誰かーーー!!!うわーーーん!!!」

泣き叫ぶKちゃんを置いて男は慌てて逃げた。

Kちゃんも服を脱ぐよう言われたようで

それ以上のことはされていないようだった。


先生もトイレに駆けつける。

「何があったの!?!?」

Kちゃんは泣いていて話せないので私が事の経緯を伝えた。


「何ですぐに呼びに来ないの!!!」

私が怒られる意味がわからない。

さっぱりわからない。何なら私も被害者だ。

誰しもが叫ぶとは限らないだろう。


私はこのトイレ事件をきっかけに男性は汚い

生き物だと認定した。

父と兄と親戚以外は警戒を怠らない。


歳は若め、高校生くらいかもしれない。

色白で少しぽっちゃりしている。

少しヨレた半袖に半ズボン。

目は細めでキョロキョロと落ち着かない。

ニタニタした口元。


私に2枚目の写真が焼き付かれた。

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