第19話 中学生 4

小学校3年4年の担任だったS先生。

私は新しい赴任先の小学校にしょっちゅう会いに行っていた。2年に上がり、近況報告だ。

「あら、また来たのね」

そう言って教員室の窓を開ける。

何故こんなにも落ち着くのだろう。

S先生は小学校を卒業しても毎年必ず一言添えた年賀状を送ってくれる。

その一言がとてもとても深いのだ。


「また来るねー!」

そう言って手を振り走り出した時、

別のクラスの女の子がこちらを見ていた。

名前は…わからない。

「何でこっちの小学校に来てるの?」

その子はここの卒業生だった。

S先生に会いに来ていると話したら、卒業しても会うなんて珍しいねと言われた。


そのYちゃんとブランコに揺られながら話しをしていた。

美術部に入っているらしいが、入部必須だから仕方なく美術部を選んで実際の所は幽霊部員といったところらしい。

私が無視されていたことを知っていて、話を聞いてくれた。浮かない顔をするので聞いたら

Yちゃんも心無い言葉に傷付いていた様だ。


「私って皆が言うほどそんなにブス!?」

「私はこの顔で生まれたからわからない!」

「生まれてくる時に顔が選べたらいいのに!」


振り絞って出した言葉だった。

私の思ったことを話した。

容姿は人それぞれ異なる、全員同じ顔だったら

ロボット。でも誰かがロボットが正しいみたく言い始めたから人は自分の容姿は正しくないと感じてしまうようになったんじゃないかな。

だから私がYちゃんはブスじゃないって言ってもYちゃん自身がそう思うならそうなっちゃうよ。私も人と比べることめちゃあるけどね!笑


「今週の日曜日、一緒に遊ぼう!」


Yちゃんは元気にそう言ってきた。

メールアドレスを交換したのはMちゃん以外で

初めてのことである。

土日は部活の後、Mちゃん家族は出かける事が多かったので私は暇を持て余していた。

土日はYちゃんとよく遊ぶようになった。

Yちゃんは小柳ゆきという歌手が好きらしく

自転車を2人乗りして後ろに乗り、愛情という歌をモノマネしながら大熱唱するのだ。

私はそれが面白くて仕方なかった。

お互い学校ではおチャラけるタイプではないので2人だけの秘密の遊びみたいで楽しかった。


Yちゃんと仲良くなったことで、S先生がいる小学校に行く頻度は増し増しになった。

そうすると他にも部活終わりに出身校で道草をしている男子生徒2人とも顔をよく合わせるようになった。

幸いにもYちゃんの容姿をとよかく言うような輩ではなくYちゃんとも仲がいい人達らしい。

おっとり系男子というのだろうか。

中学生が遊ぶ範囲などたかが知れているので

土日に会うことも度々あった。

なので4人でたわいも無い話をして、帰る。

仲良し4人組といったところだ。


2年生になって私の人嫌いは多少、たぶん多少

改善されてきたと思う。

母も「やっとあんたが笑うようになった」と言っていたからそうなのだと思う。


中学になって気付いたのだが、女子は恋バナというやつに夢中になっている。

誰かと誰かは付き合っているなど聞かされる。

私は常々ギモンに思っていたのだが、

付き合うとは何なのか、付き合ってどうするのか、付き合ったところで何が起きるのか。

未知の世界であり、そして拒絶の域だ。

しかし、自分の感情や価値観とは裏腹な出来事が頻発するようになる。


いわゆる【モテ期】というやつだ。


と、言っても自ら自覚しているわけじゃない。

真っ先に相談したMちゃんにそう言われたからそういうことにしているだけである。


ある日、突然の出来事から始まった。

「小1のときから一目惚れをして好きなんだ」

「付き合って欲しい」

と、8年越しの恋を告白してきた人がいる。


正直、こわかった。鳥肌がたった。

自分の知らない間に8年も勝手に好かれていたと思うと私としては恐怖の対象だ。

恐怖のあまり自分が何を言ってその場を離れたのか覚えていない。覚えているのは慌ててMちゃんちに向かったことだ。

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