第48話 フリーター 1
私は小学校3、4年生の時の担任の先生にお手紙を書いた。毎年、年賀状を送りあっている。
今回はお手紙にした。大学に進むも4ヶ月で辞めてしまったこと、アパレル販売員になったことなどを報告した。S先生はいつも紺色の万年筆でお返事をくれる。そしていつもこう言う。
「〇〇ちゃんは〇〇ちゃん。人とくらべないこと。しっかりね!」
文章の最後はこの言葉で締めくくられている。
お手紙を読むと元気モリモリになる!!
お店の服は70%割引で買える。
元々、単価の安いお店なのでめちゃ安だ。
でも安い分、もちろん売るために自腹で買う。
このお店は本来、このショッピングモールで
1番売上があっておかしくないのだが残念な事に
アパレル本社の営業がモールの正門と裏門を
間違えたままテナント契約をしたためそもそも人通りが少ない。
同じ会社の別ブランドは堂々と正門前にあり
売上は万々歳。
なのでこっちの店は人が通ったら何とかその人をお店に呼び込まなくてはいけないし、ひとたび足を踏み入れたら何か1点でも買ってもらわないと閉店になってしまう。正門側のように呼ばなくても人が勝手に入ってきてくれる訳ではないのだ。洋服屋さんで声掛けされるのが嫌だという人は多いと思うが、その気持ちはわかる。
私の他に2人フルタイムのアルバイトが居て、
お店が余りに暇な時は試着をして遊んでいた。
それくらいゆるーい感じで居心地も良い。
私が入社して1ヶ月が経った頃、2歳年上のギャルが入社してきたのだが中身は全くギャルじゃなかった。会ったばかりなのに昔から友達のような感覚。お互いが初日からそう感じたというのだから、前世でも友達だったのかもしれない。誕生日は私と1日違いだ。
私はお店でやるべき事を理解している。
【売り上げを達成する】ことだ。
どうやら販売業は割と性に合っているようで
お店でいつも1番売り上げが良かった。
そして1年で1番大事な時期がやってくる。
お正月のセール!!
クリスマス前から比較的アパレルの売り上げは
上がるのだが、お正月は比じゃない。
さらに言えばここだけの話、お正月のセールで売られる服は去年の売れ残りや人気が無かった
年内物だ。それでも私は売る自信があった。
セール前はめちゃくちゃ忙しい。棚卸しもあるし値札のシールも変えなくてはいけない。そんな作業をしているといつもの佐川のあんちゃんが納品を運びにやってきた。
「ういーっす。おつかれ~」
今はまずお目にかからないが当時の佐川急便は
【飛脚の前掛】をしていた。
これがとてもチャラく見える。
あんちゃんは3人組でこのモールを担当しており常駐していた。ゴミ捨てに行く途中の場所に【飛脚小屋】を作ってもらうほどモールの人たちからも良くしてもらっている。
私が休憩に行く時、1人のあんちゃんと会った。
「ねぇねぇ、連絡先おしえてよ」
……内心、えーーーと思ったが交換した。
佐川組とうちのスタッフと飲みに行こうという話もあったので連絡係として一旦交換した。
ここで連絡先を交換していなければ。
確実に私の人生は違っていた。
少なくとも19歳で妊娠することは無かった。
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