第79話 次男の入園式

一応、父親なのでカツオに報告をする。

明らかに大変であるに違いないのだが、どう伝えてもピンとこないようだ。

バスの運転手になってしばらく経った。

なったのはいいものの中々ダークグレーな会社である。

睡眠不足で事故を起こさないように次の運転まで最低8時間は空けるシフトになっているのだがあくまで【シフト上では】だ。

バスは遅れるのが当然だし車庫に着いてからも

車内点検や安全点検などやる事がある。

それらの時間は【含まれない】ので家に着いた頃には8時間なんてとうにきっている。

さすがの私も見ていて疲れる気持ちがわかる。

月の残業100時間は当然、でも残業が無いと大した手取り金額にならないのがツラいところ。

……耐えてくれ。



さすがに有給休暇はちゃんと取らせてくれる。

なぜなら今日は次男の入園式だからだ。



帽子と靴下だけがブカブカの姿で家を出る。

歩き始めて5ヶ月のヨボヨボ、間違えたヨチヨチが自力で幼稚園まで歩いたら何分かかるのか試してみた。


うん。時間の概念がないってこわい。


道端の石ころや雑草ひとつひとつに気がいってしまうので1歩進んで5步は下がっている。

遅刻してしまうので念のために持ってきていたバギーにぶち乗せ幼稚園に向かう。

ついこの前、長男の入園式をやったばかりな気がする。もう1年が過ぎたのか。

クラスに着き次男の担任の先生へお願いする。


体育館の前の方に年中クラスと年長クラスが座っていて、年長さんたちは歌を歌う。

皆の拍手により新入園児が迎え入れられる。

先生と手を繋ぎ先頭を歩く次男。

クレヨンしんちゃんくらいの大きさかよ。

長男を見る。

どうやら興味がないようだ。

隣の席の男の子とふざけている。

……こやつ、クラスではヤンチャタイプだな。


次男は舞台上の先生の隣の席についた。と、思ったら音楽に合わせて立ち上がりノリノリになった。

次男を知っているママ友たちは爆笑している。

特に同じクラス委員だったパリピママは爆笑しながらうちの次男の動画をめちゃ撮ってあとで送ってきてくれた。

私たちは見えにくい所に居たのでそれをわかってくれていたのだと思う。

クラス委員としての最後の仕事が入園式のお手伝い。薄っぺらい紙(名前分からない)を山折り谷折りしてホチキスで留めて花を何個も何個も作ったのを覚えている。でも私は入園する側だったので当日の当番は2人にお願いしていた。

不安と感動が入り交じる感情。

私もここのクラスに参加するということは私の入園式でもあるのか。

……心して挑む。



【何か楽しそうだ】という事だけは理解している次男は終始ご機嫌さんであっという間に入園式が終わる。

帰宅し長男のときに行ったお食事処に行った。

「次男どうだった?」と長男に聞いてみる。

「いたよ!」と長男が言う。

……そりゃいるだろっ!!

「そりゃいるだろっ!!」

心の声じゃなく普通につっこんだわ。

「隣の子とふざけてたでしょー見てたよ!」

「ふざけてないよ!あのね!ちがくてね!」

ニヤニヤしながら話している時点で黒だ。


次男は食物アレルギー用のお子様プレートを食べていると思ったら国旗の楊枝をハンバーグにブスブス刺して遊んでいた。

……やめれ。食え。

とはいえレストランのアレルギー用ご飯は失礼な話、美味しくない。

次男の目当てはプレートに付いてくる選べるおもちゃだ。

何度この美味しくないハンバーグの残飯処理をさせられたことか。

ノリとイキオイでリズミカルに口に突っ込む。

……よっしゃ!食べた!勝ったー!

自分ルールで勝手に遊ぶ。



何もしたくなくなる気持ちになる前に家に着いてすぐお風呂に入ってしまう。

お風呂さえ済ませてしまえばあとはいつ寝てしまってくれても構わない。

その時は夜の歯磨きは諦める。

次男は前歯しかないから余計まぁいっか。

小腹が空いたと言い始めた時用に食料も確保している。さぁ!寝るがいい!


プラレール始まるんかい。


子供は寝て欲しい時に寝ないし、寝ないで欲しい時に寝るのなんなの。

もうすぐ鬼スケジュールが始まる。

この土日だけは穏便に過ごしたい。

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