第65話 息子たちの育児 8
起きた瞬間、パソコンをシャットダウンしたように真っ暗になった。そして倒れた。
立っていられなかったからだ。
意識はある、でも何も見えない。
うっすらと見えるようになってきたとき、家がグルグル回転しているのか自分が回転してるのか区別がつかないほどの眩暈だとわかった。
四つん這いになるのが精一杯。
次男が泣いている。長男は起きているのか確認が出来ない。強烈な吐き気を催し、這いずりながらトイレに向かおうとするが難しい。
なんとかスマホを手に取り父に電話をする。
状態を話し、すぐに迎えないと言われたが祖母とちょうど家に居た兄に連絡をしてくれて2人が電車で急いでかけつけてくれることになった。到着まで待つしかない。症状によっては自分で救急車を呼ばなくてはならないかもしれないと思うほどだった。
どうやら長男も起きたようだ。朝ごはんを食べたがっている。オムツもまだ変えていない。
伝わるかどうかは別として話しかけた。
「ママいまからだがヘンになっちゃってうごけないから、まっててね。もうすぐおっきいばぁばとおにいちゃんがくるからね。ごめんね」
苦情の電話を入れられてしまったことは実家の家族には報告していた。そして、引っ越したそばからまた引っ越すことを考えていた。
というのも、今回引っ越した家は再びカツオの父親が探し入居費用を支払ってくれていた。
いきなりバスの運転手になると言って幼子2人連れて県外へ行くのだから費用を出すと言っても全然おかしくない。それならばと、うちの実家は手を出していなかった。
しかし、泣き声問題が起きてしまいこのまま此処での生活を続けるかどうかというところで悩んでいた矢先に、倒れてしまった。
祖母と兄が到着した。
喋ることは出来るのでまずは長男の世話を口頭で伝える。次男のオムツも変えてもらいミルクを作り飲ませ抱いていてもらう。
冷蔵庫から飲み物を出してあげることも出来なかったのできっと喉がカラカラだったろうに。
長男は牛乳とアンパンマンの野菜パンを喜んで食べているようだ。
2人が来て安心したこともあり、少しずつ立てるようになってきた。少し歩いた所に内科があるので兄に支えられながら向かった。
「お前、大丈夫なのかよ。もう少し大きい病院でしっかり検査した方がいいんじゃねーの?」
「とりあえず、今はこれが治まれば構わない」
「いいなら別にいいんだけどさぁ」
「ごめんね、わざわざ電車で来させて」
「あー、大丈夫。観光みたいなもん。バァちゃんが居るからグリーン車で来たし」
……観光気分かい!でもありがとよ。
内科で症状を伝える。メニエール病の検査はしたことがあるかと聞かれたがしたことは無い。
耳鼻科でメニエール病かどうか調べた方がいいかもと言われ、とりあえず眩暈止めを処方してもらいすぐに飲んだ。
カツオに連絡を入れておく。
かくかくしかじか、自分ひとりで子供の面倒が見られないので実家へ帰りしばらく療養すると伝えた。父が仕事を早めに切り上げてくれたので夕方に車で迎えに来てくれた。
……これは本格的に再びの引越しを考えた方がいいかもしれないな、、、。
もう義理の実家をあてにするのはやめよう。
きっと金額でしか選んでないんだろう。
何が「いい家あったよ」だ。
前の家は鉄コンマンションで間取りなども良かったが、今回はボロ木造で風呂は今どきバランス釜ってなんだよ。子供が火傷したらどうすんだよ。泥団子脳みそが。
そんなイライラを抱えつつ実家の方で耳鼻科に行きメニエール病の検査もしたが問題はなさそうだった。ストレス、だろうと。
そうだとは思ったよ!
眩暈が良くなってきた頃、布団を干そうとしたらぎっくり肩になった。キョンシーくらいしか腕が上がらない。ちなみにぎっくり首にもなったことがあるのでコンプリートということでいいだろうか?
そういえば、高校3年生の時に猫背を治そうとしてオードリーの春日さんみたく胸を張っていたら背中を肉離れしたことがある。腰に巻くコルセットを胸の高さで巻いて過ごしていたが、授業どころではなかった。背中が痛すぎて座っていられない。それでもマラソン大会には参加し順位は22位だった。3年目にしてやっとYくんと被ることがなくなった!
という思い出がある。
私は物件サイトで新しい家を探していた。
どうやら父も探していたらしい。
「今住んでる家を30秒歩いたくらいの所にダイワハウスのアパートがあるんだけど、そっちは鉄筋だから前の木造より音が響きにくいし丈夫だし、保険で水周りとか色々無料で修理もしてくれるみたいだよ。今のところより家賃と共益費が1万5千円高くなっちゃうけど1部屋多くなるし、どうかな」
「どんな人が住んでるのかも聞いてみないと」
「そうだね。お子さんがいる世帯が入ってればいいね。あとダイニングに引き戸があるみたいなんだけど、これ外して別の部屋に立てかけておけば3DKが2LDKになるんじゃない?」
「確かに。リビング広いと遊びやすいかも」
「この距離で引越し業者使うの馬鹿らしいよね。会社から台車持ってくるから自分たちで頑張って運んじゃおうか」
「カツオ引越し業者だったから丁度いいね」
こうして私たちは内見に行った。
事前に引越しの事情を伝えてある。
クローゼットもたくさんあり広いし、何気に嬉しいのは洗濯機置場に扉がついていて目隠しができること。生活感が隠せる。窓も多く陽当たりがいい。部屋の中で陽に当たる生活が無事にできるだろうか。国道沿いだけど少し奥にあるので車の音も思っていたより気にならない。
どうやらお正月は家から箱根マラソンが見えるらしい。特に興味はない。
1階の角部屋で、上の部屋には小学校低学年と中学年のご兄弟が住んでいるようだ。そのご家族はもっと前から住んでいるが特に苦情など入ったこともなく、アパートの周りでシャボン玉などで遊ぶ元気な子達と聞いた。他の入居者さんも穏やかな人がほとんどとのこと。
寧ろ、ご年配の方がいて会えば気さくに声をかけてくれるそうな。
……事前情報を沢山教えてくれて感謝。
……ここなら大丈夫と信じたい!!
こうして神奈川県民になってすぐにご近所への引越しが決まったのである。
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