第66話 息子たちの育児 9
私はベランダに干されたユラユラ揺れる洗濯物を眺めるのがとても好きだ。
陽があたり風が通る穏やかな時間。
出窓からも暑いくらいに陽が入る。
雨戸は就寝時のときだけ閉めれば大丈夫。
新しい家に引っ越してから穏やかな時間が少し取れるようになった。
もう少しで次男が寝返りをしそうだ。
同じくらいに生まれた子達はもうハイハイやつかまり立ちをしている頃だ。
乳幼児検診に行くたびにウィリアムズ症候群や発達遅延のことを伝える。そうすると大抵こう言われる。
「じゃあ病院に行ってるなら大丈夫ですね」
……何が大丈夫なんだろう?
こっちは行きたくもない検診にわざわざ時間と手間を割いて行っている。行かないとネグレクトを疑われ児相が訪問に来るからだ。
家に帰り揺れる洗濯物を取り込む。
長男が狙ったようにお邪魔をしてくる。
プラレールを避けながら洗濯物をしまう。
家のインターホンがピンポーンと鳴ったので出てみると2階の兄弟が立っている。
玄関を開けて「どうしたの?」と聞く前にすぐ
「家の電話機がピーピー鳴って止まらないの!」という可愛らしい事件が起きたようだ。
私は両腕に長男と次男を抱えながら2階へ行く。
「ごめんね、ちょっとお邪魔するね」
どうやら両親共働きで鍵っ子のようだ。
「あ!こら!勝手に行かないの!」
長男が探検しようとするのを阻止する。
玄関先に置いてある電話台まで入らせてもらい
それらしきボタンを押したら鳴止んだ。一応、子機もちゃんとはまっているか確認をする。
「これでもう大丈夫だと思うよ」と声をかけると「ありがとう!!」と元気に返ってきた。
……なんて優しい世界なんだ、、、。
「また困ったらおいでね」と声をかけて戸締りをしっかりするよう伝え家に戻った。
もうすぐ冬がやってくる。
12/2長男の誕生日
12/25クリスマス
12/26次男の誕生日
1/1お正月の集まり
短期間に行事がギュッと詰められている。
わーい!ケーキ三昧だぁ!
長男と一緒に誕生日飾りをする。
幼児雑誌の付録シールまで貼り付け始めた。
クレヨンだけは死守しなければならない。
傍らで次男が不器用に寝返りをしているのだが
うつ伏せになったものの戻れなくて泣く。
戻れないしうつ伏せで頭を持ち上げるのも疲れるしで、突っ伏しながら泣いている。
次男を膝に乗せて指を持ちシールを貼る真似事を一緒にやる。長男は楽しそうだ。
次男はミルクをあまり飲まないので離乳食を始めていた。何から栄養を摂っているのか不思議だったがこまめにミルクをあげていたおかげか体重も少しずつ増え首もしっかりすわったのでBumboというベビーソファに座れるようになり
見るも無惨に形のないドロドロの離乳食を食べているのか飲んでいるのかわからないがミルクと併用して与える。
長男の時は次男が産まれてからというもの離乳食を作る時間が本当に無かったので市販のものを買いだめていた。赤ちゃんといえど甘いものや味のしっかりするものによく食いつく。リンゴピューレなんかが大好きだ。
その日はおやつにたまごボーロを買った。
私はたまごボーロが大好きで大人になっても平気で大袋1つ食べてしまう。
……これは子供用、と自分に言い聞かせる。
「ボーロ美味しいねえ!」
……誘惑に負けた。
唾液さえあれば溶けるので次男も食べられるかな?と思い1粒を口に入れてみた。
食べた。
そして1分後には顔や体に発疹が出た。
……まさか!こやつ!!
考えられるのは小麦か卵だ。
……くそうっ!泣
その日は長男がバナナを食べていた。
私はバナナ嫌いなので一緒に食べられない。
柔らかく潰せば次男も食べられるかな?と思いスプーン1口分を口に入れてみた。
食べた。
そして1分後には顔や体に発疹が出た。
……まさか!こやつ!!
完全にバナナやん。
……くそうっ!泣
翌日、子供のアレルギーを調べてくれるクリニックを探し検査をする。ついでに長男も。
マスト項目の他に任意で調べたい項目を追加し検査を待つ。運命の検査結果が出た。
長男は特に問題なし。次男に関しては今の所、
卵(特に卵白)とバナナに反応した。
卵白とバナナは数値がかなり高い。卵は治る可能性があるが果物は成長するにつれ悪化する可能性があるので除去法しかないとのこと。
……小麦は大丈夫だった良かったー、、、。
家に帰り、ふと思う。
いつも作っている料理。誕生日で作る料理。
……卵めちゃくちゃ使うじゃん。
その日から料理は当然として、おやつも殆どをアレルギーに配慮し手作りに変えた。
当時はアレルギー品目の表示がやっと義務付けられた頃だったがアレルギーに配慮した食べ物というのは殆ど無かったので作るしかない。
洗い物のスポンジも分けた。
……まったく。手間のかかるやつめ。
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