第67話 円形脱毛症になる

ホールケーキを目の前にいても立ってもいられない長男。

【2】の形をしたロウソクを刺そうとする。

危うく数字本体がケーキにめり込む所だった。

ハッピーバースデーを歌い念願のフッ!の瞬間である。無事に煙が上がる。

残念ながらカツオは仕事なので帰りが遅い。

残念ながら次男はアレルギーなので今年のケーキは食べられないが、来年はアレルギー対応のケーキを買ってあげようと思う。

誕生日プレゼントはトミカとプラレール。

プラレールの線路が嵩張ること嵩張ること...。

お片付けBOXはすでにお山になっている。

でも線路は多い方が楽しいのだ。それに組み立てることにより想像力も豊かになる。

今では電車と車の交通事故も起こすので縁起でもない。でもそこにしっかりとパトカーと救急車と消防車が集まるので良しとしている。



クリスマスの朝。

長男は枕元のプレゼントに気付かない。

「あれあれー?このふくろはなんだろー?」

有名な少年探偵並の演技だ。

昨晩、長男が寝てから帰ってきたカツオにプレゼントを渡し起こさないように置いてもらっていた。こういう行事の時はほとんど仕事なのでせめてものミッションを与える。

無事に置けてご満悦のようでなにより。

プレゼント袋の中身は、魚の図鑑。

水族館に連れて行ってからというもの、お魚にハマったようでグッズ売り場などで気に入ったお魚のぬいぐるみも収集するようになった。

ぬいぐるみも嵩張ること嵩張ること...。

オタク気質なのは私のDNAだな。



【1】の形をしたロウソクを長男が刺す。

次男の誕生日は実家でお祝いをした。

泣き顔だけじゃなくニコニコと笑うようにもなった。コロコロもする。ハイハイはまだ。

でもまずは1年、無事に過ごした。



元日はお昼頃まで実家でおせち料理などを食べゆっくりしてから父方の祖父母宅へ向かう。

親戚が一気に集まるのですしずめ状態だ。

祖母の作るおせち料理、特にお雑煮が絶品である。鶏のガラから出汁を取って作る。私は既に母乳はやめて出なくなっていたので乳腺炎の心配はすくない。今年は餅が好きなだけ食べられる!と調子に乗って一体何個食べたのやら。



2日はカツオの母方の実家に行く。3日は父方の実家に行く。離婚しているので1度に済まないのが面倒臭いしストレス2倍だ。でもお年玉の

【回収】のためには我慢、我慢。

私はお年玉貯金として貯めている。

うちの実家は子供が多いので学年によってお年玉の金額が決まっており、20歳になったらお年玉自体を卒業する。その時が来たら好きに使いなと渡す予定だ。



まだ正月気分が抜けない頃。

次男の体調がいつもと違うことに気付く。

熱がある。咳もしている。喘鳴?も若干。

【RSウイルス】かもしれないと思った。

こども医療センターで心臓の基礎疾患がある場合など特に乳児期は重症化しやすいので咳や喘鳴があったら病院に行くよう言われていた。

この時まだ実家に居たので市立病院に連れていったところ、やはりRSウイルスだった。

その日から24時間の点滴治療が必要となり入院することになった。しかしここはこども医療センターではないので親も一緒に泊まらなくてはならない。長男も診察してもらったが大丈夫そうだ。大丈夫だけど気管に少し炎症があるという体で3人一緒に個室入院することにした。

……6人部屋は、ムリっっっ!!!

こうして大型犬の柵のようなベッドに3人で過ごすことになった。次男は体調が悪いのですこぶる機嫌も悪い。乳児用の甘いのにめちゃくちゃ不味いシロップ薬を飲んでくれない。少しずつあげても口からブーッと吹き出してくる。

……こやつっ!くそうっ!

ちなみに看護師さんがあげても吹き出す。

長男は面会時に持ってきてもらったトミカで楽しそうに遊んでいる。

……長男の適応能力、高すぎん?

何日入院したか忘れた。

1日が長すぎて日にちの感覚がない。

でもたぶん10日くらいだろうか。

【3人】無事に退院できた。重症化もせずに済んだし、ついでに皮膚やらなんやらと色々診てもらったのでついでに良かった。

……個室料金は高かった、、、。



その年のゴールデンウィーク。

カツオが連休を頂いたのでカツオの母方の実家に2泊することになった。内心、最悪だ。

義母は仕事に行くので代わりに私が義理の実家の洗濯物や掃除をしている。何のために遊びに来ているのかわからないし、そりの合わない人の下着を干すのは気が引ける。

そんな中、長男が遊んでいるおもちゃの電池が切れたようで交換しようとしたが替えが無く、カツオが原付でちょこっと買いに行ってくると言い出てい行った。出て行って約3分後。

カツオから電話がかかってきた。

「やっちゃった。小石で滑って倒れたバイクに脚挟んだ。たぶんこれ、折れてるわ...」

……心配よりも先に呆れてしまった。

長男と次男を抱え、急いで転倒場所に向かう。

家を出てほんっとうにすぐの橋の所だ。

バイクが倒れた音を聞いて出てきた方がわざわざ自分の家の毛布をかけてくれていた。

「夫です。すみません、すみません」

何人かに囲まれたカツオの毛布をめくる。

「最悪だわ。脛骨と腓骨どっちも折れてるわ」

スネには2本の骨がある。どちらも折れているので変な所から足が地面に180度傾いている。

「救急車は呼んであるから!」とのこと。

「すみません、ありがとうございます」

カツオを睨みつける。

「これ、手術でボルトだから」

「マジかー。痛ってぇー」

両腕に子供を抱える腕力はもう無い。

「一旦、家に戻って保険証などを取りに戻るのですみませんが救急車が来るまでお願いできますか?」と声をかけて家に戻る。


「はぁァァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!」


溜め息に怒りが混じる。

子供の物も含め必要な荷物をまとめて戻る。

サイレンの音が近づいてきている。急ぎ戻ると

長男は本物の救急車にキョトンとしている。

……これから乗れるね。良かったね、、、。

搬送先の病院が決まるまで時間がかかった。

なんせ、ゴールデン!ウィーク!なのだから。

整形外科の先生がいる病院は別の市になってしまうが運んでもらうしかない。

レントゲンを撮ったところ綺麗に2本ポッキリ折れていた。その日は手術が出来る先生がいないとのことで、カツオは折れた足を固定だけして痛み止めで過ごした。

私は父に迎えに来てもらい実家に帰った。

うちの両親も呆れている。


翌々日、手術が終わり足にはボルトが入った。

【全治3ヶ月】

1ヶ月もの入院が必要になり、私たちはコイツが完治して仕事復帰できるまで義理の実家に居ることになってしまった。

ストレスにストレスが重なって更にストレスが積み重なり、カツオが退院する頃には私の頭に

2つの円形脱毛症が出来ていた。しかも500円玉ほどの大きさだ。


10円ハゲなんか生ぬるい。50倍のデカさだ。

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