第74話 息子たちの育児 第2章 1

しーーーーーん、、、、、



あれ?ここ深海かな?

あれ?存在を消すスペックホルダーかな?

と、思うほど一瞬でクラスが静かになる。


先生が「どなたかクラス委員を...」という言葉を発した瞬間にである。


クラス委員というものが具体的にどのようなことをするのかがわからない。

3名選出しなくてはならないが、他の2人とソリが合わなかったら最悪だ。

働きたいママさんもいるだろう。

皆リスクばかりが先行しているに違いない。

先生の顔も、やっぱりかぁ~といった表情をしているからやはり恒例なのだろう。


私はクラスにある壁がけ時計を見ていた。


2分経過。


まだ誰も手をあげない。

いや、違う。存在を現さない。

……なんという能力だ!!


3分経過。


顔は華厳ノ滝。

体はナイアガラの滝。


4分経過。


き、気持ち悪くなってきた。

緊張で口からも滝が出そう。


5分経過。


、、、。


心の中で59秒を数える。


5分59秒経過。(たぶん)



「すみません、私、やります」



そう口火をきったのは、、、


そう!!この私だっ!!(急にドヤ顔)



「え!やってくださるんですか!!」

先生が驚いた顔で見る。

それもそのはず。

私はクラスで1番若い母親だった。

先生と私は同い歳だったため親近感があったのか、入園式の時そのことを教えてくれていた。

そして私にとって永遠の様に長く感じた5分間は

先生にとっては即決くらいの早さだ。


皆が一斉にこちらを見る。


……み、み、見ないでくれっ。


私が挙手してすぐ後に、やるかやらないかコソコソと話していた2人が同時に挙手をする。

これで3人のクラス委員は決まった。


急に隠蔽能力が解かれる。


……やはり能力者の集まりだったか!


先生曰く、およそ7分でクラス委員が決まったことは過去に1度もないとのこと。

どんだけ隠蔽能力高いのよ。



クラス委員になったので、その場で軽く自己紹介をすることになった。

背中にくっついている次男もチラ見せする。

おんぶをしているから暑いと思われているに違いない。

本当は今にでもゲロを吐きそうだ。


クラス委員が決まったので解放されたゆり組は他のクラスを尻目にさっさと帰っていく。

私と他の2人と先生は残り、クラス委員の仕事の説明などを受ける。

想像していたより楽しそうだ。

私は23歳、もう1人が25歳、もう1人が26歳。

……年齢!近い!!

若いお母さんがクラス委員をやることはほぼほぼ無いらしい。

逆に職場でいえば、御局様?みたいな人がやりがちで先生も気まづい時があるらしい。

年齢が近いのでジェネレーションギャップもなさそうだし、やっていけそうな気がした。


これを機に何とか対人への恐怖を克服したい。


私以外、私が対人恐怖症なのを知らない。

母に次男のことも考えてクラス委員に立候補したことを電話で話した。

「あんた、すごいね」

私は母に褒められた?のだろうか。

そんな事まで考えて行動するなんて、と。


そこに至るまでの葛藤は知らない。

話したらもっと褒めてくれるだろうか、と頭をよぎったが黙っておいた。

恐らく、心配が上回るだろう。

そして神経質な性格故、面倒そうだ。

だから私はいつでも仮面を被る。


自分でも自分がわからないくらいに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る