第86話 息子たちの育児 第3章 7
狭い運動場に溢れんばかりの人、人、人。
今日は幼稚園の運動会である。
長男は年長クラスの応援団に入ったので黒いハチマキを巻いて大太鼓の横に立ち自分の青組を応援する。
次男は担任の先生や補助の先生と行動をする。
午前中に行った玉入れ競技で目に砂が入った長男はビービー泣いている所をカメラマンにバッチリ写真を撮られる。
作ったポンポンを持って音楽に合わせ次男は踊っているというか、なんというか、海中で揺られる海藻のようにユラユラとダンスをする。
……音楽ほんとに好きだなぁ。
昼食の時間になり、仲の良いママさんたちと集まりお弁当を食べる。
こういう時パパさん同士は気まづそうな雰囲気を出すのだが、カツオはいつでも特に喋るでもなくただ顔がヘラヘラしている。
子供たちは頬張りながら楽しそうに話し、おやつの交換もして午後に備える。
午後の1番のメインは徒競走だ。
去年の長男は6人中、4位。
決して足が速いわけではないのだが、面白いのが集中するとペコちゃんのように少しだけベロがペロっと出るという癖だ。
去年カメラマンが撮った写真にベロを出しながら走る長男がいてもちろん購入した。
1位になるかどうかよりも、今年もベロが出ているかどうかが気になってしまう。
普段プラレールなどを組み立てる時もベロが出ているので恐らく今年も出るだろう。
……やっぱり出てる!
少し外側を走ったためか5位でゴールしたが本人は順位に拘らないので走りきったことに満足していた。
次男の徒競走に関しては、もはや徒競走ではなくワンマンパフォーマンスライブだった。
さっき一緒にご飯を食べたママさんたちを見つけて超絶笑顔でそっちに向かって行った。
大爆笑が起きる。
「ゴールはあっちだよー!!」てけてけ。
「違う!違う!あっちだよー!」てけてけ。
「がんばれー!!」へらへら。
「次男くーん!がんばれー!」
オーディエンスを味方につけていた。
補助の先生と手を繋ぎながらゴールをし、まるで1位かの如く喜ぶ。
……めでたいやつだ。
こうして無事に怪我もなく運動会が終わり先生にお礼をして帰り支度をする。
運動会のお弁当というのは絶対に作りすぎるのはうちだけじゃない気がする。
時期が時期なので残りを食べるとお腹を壊しそうなので勿体ないがごめんなさいをしてポイさせてもらう。
そういえば、私と兄が小学生の時…確かあれは
私が小学4年生だったと思う。
その頃は運動会というより親たちの飲み会になっていた気がする。
海にいつも持っていく折り畳みテーブルベンチを広げ【おでんパーティー】をした。
ご丁寧にガスコンロも持ち込み、前日から煮込んだおでんをつまみにビールを持っている。
当時はまだ残暑残る秋に運動会をやっていた。
それで敢えておでんである。
母はとにかく人と違うことをやりたがり、私は普通では終わらないのよ、という目立ちたいのか何なのかわからないがそういう人だ。
私は母の様な母親になりたくなかった。
それが例え脳腫瘍のせいで余計に性格が面倒になったとわかっていても、参考にはできない。
振替休日の月曜日。
3人で久しぶりに江ノ島水族館に行った。
アイスを食べながらイルカショーを観る。
帰りに思う存分お土産コーナーをまわる。
まわる、まわる、、まわる、、、
「あのー、そろそろ決めてもらえませんか?」
私は新作のウミウシ写真集を片手にずっと子供たちの後ろを着いて回る。
長男は触り心地のいい小ぶりのイルカのぬいぐるみに決めた。
次男は買えれば何でもいいが故に決まらない。
こういうときは単純な物の方が食いつく。
溶けると海洋生物のちっこい人形が出てくる入浴剤を勧めてやっと会計に並ぶ。
行きは江ノ電で向かったので帰りは小田急線で
サクッと家路に向かう。
「今度は鎌倉に行こうか」
「かまくらってなにがあるの?」
「食べ歩きがいっぱいできるよ」
「いく!」
「神社でカランカランもしようね」
「うん!」
入浴剤から出てきたペンギンの人形を握りしめイルカのぬいぐるみを抱きしめ、気付いたら2人はすっかり眠っていた。
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