第85話 息子たちの育児 第3章 6
火曜日、今日は療育センターの日。
幼稚園では運動会の練習が始まっている。
次男は皆より幼稚園への登園が少ないので練習があまりできないなぁ...と、一瞬心配が頭を過ぎったが必要がないことに気付く。
先生と手を繋いで先生の横に居て周りのクラスメイトの真似をするだけなのでなんならぶっつけ本番でも次男に関しては問題ない。
ダンスの振り付けもオリジナリティを出してくるので覚えなくても問題ない。
そして何よりお遊戯会の練習を全てボイコットした私が言える立場じゃない。
……うん!個性の尊重って大事よね!
自分を正当化する虚しさ。
療育バスが停まる場所は大きな総合病院の横で
その病院の駐輪場がすぐ近くにあることに気付いてからは、電動ママチャリで向かい病院の駐輪場に停めていた。
ヨボヨボからやっとヨチヨチになったものの、毎日遅刻との戦いをするのは疲れる。
ここは利便性をとることにした。
今日も今日とてプログラム内容に大きな変わりはない。
発達障害をもつ子供たちはルーティンを好む傾向がある。
クラスメイトたちもやっと火曜日と木曜日はここに来るというのがルーティンとして組み込まれてきたようだ。
家でもウォールポケットと絵のカードを使い、行動の援助をしている家庭がある。
次男に関しては人見知りと真逆で人との距離が近くなりすぎたりする。
……変質者にだけはならないように育てよう。
たまに上の子供が発達障害があるから下の子供を作って将来面倒を見てもらう、なんていうことを聞くが私は反対派だ。
長男は長男として生まれてきた。
次男もそう。
だから私は「お兄ちゃんなんだから!」という教育は一切していない。
長男は長男の好きな様に生きて欲しい。
その片隅に次男を置いといてもらい、どうしようも無いことが起きたときは助けてあげてと。
なので次男に関しては【自立】してもらうことが目標である。
働いて自分のお給料で一人暮らしが出来たらもう何も言うことは無い。
出来るかはわからないけど、出来るようになるために今から頑張らなくてはならないのが次男の運命というのだろうか。
さて、次はお着替えの時間だ。
早速Tシャツの前後が逆である。
脱いだ服は畳んで袋に入れるのだが横着者の次男はグルグルポイと詰め込むので先生に見つかり、やり直し。
嘘泣きをしてみる。
通用しない。
渋々、やっつけのように畳み入れ直す。
画用紙にお絵描きをしたり折り紙をちぎって糊で貼り付けたりするのだが、次男はひたすらに折り紙をちぎる。とても愉快そうだ。
一応、作品を作らなくてはならないのでペタペタするように促す。
宇宙語を話しながら何かが出来たらしい。
お弁当を食べた後は和室でママさんたちと楽しくお喋りをする。
いつか子供を預けて飲み会が出来たらいいね、というのが私たちの目標で念願だった。
そしてその目標、念願は数年後に達成されるのである。
その日が来るまでの努力を今しているのだ。
今日の金曜日はこども医療センターの通院。
次男だけ幼稚園をお休みする。
長男を幼稚園に預けられるようになったのは本当に助かる。
いるといないではぜんっぜん労力が違う。
……ありがとう!幼稚園の先生たち!
こうして次男と2人で病院行きのバスに乗る。
後ろドアから乗り2人席に座ると、車内の鏡越しに運転手が手を振っている。
……カツオの奇跡PartII。
「ほら、パパが運転手さんだよ~」と小声で次男に伝える。
「パパっ!」とニコニコしながら手を振る。
……なんて言って降りたらいいのだろう。
前回は長男に降りる時にありがとうございましたって言うんだよ、と子供を良いように使ったのだが今回は次男だ。
車内で散々パパパパパパパパと言っているがもしかしてただの宇宙語と思われていたとしたらラッキーだ。
病院に着き、最後に降りる。
「次男~、病院がんばってねー!」
「がんばろうね~、お疲れ~。」
「おうっ」
……車内マイクをオフにしろ!
まさか再びカツオの運転するバスに乗ることになるとは思いもしなかった。
が、二度あることは三度あるとはよく言ったものでその後、本当に三度目があったのである。
機械で受付をすると診察する順番が書かれた紙が印刷されて出てくる。
毎度お馴染み血液検査からだ。
採血室には音の出る絵本があるので次男のお気に入りである。
3歳にして普通に寝転がり一応タオルでグルグルと簡単に拘束はするものの、採血をされながら目はずっとどの絵が描かれた止血シールにするか缶を見ているのだからすごい。
……ここからが長いんだよな、、、。
「ばいきんまんにしよう!ね!ね!!」
そしてドキンちゃんのシールを選んだ次男と2人でソファーに座り止血を確認して貼り付ける。
次はレントゲンと心電図か。
先に検査は全て終わらせておき、内分泌科と遺伝科を受診する。
循環器内科は、と。
【緊急手術のため診察3時間遅れです】
……手術してる子、大丈夫かな。
私たちは祈りながら待つだけである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます