第69話 子供たちの育児 11

長男の幼稚園への入園を考える時期になった。

徒歩3分くらいの所に幼稚園がある。

でも私には懸念点があった。

次男のことだ。

もし長男を受け入れてくれても、次男を受け入れてくれるかはわからない。でも入園するなら

2人同じ所にしたいと考えていた。

幼稚園の入園説明会のポスターを見る。

……挨拶すらまともに出来ないかもしれない。

想像をするだけで息苦しくなって汗が出る。

……しっかりしろ、自分。母親だろう。

頑丈な仮面を選び、被る。



カツオは無事に仕事復帰したが、それまでの間あまり風通しに家に帰れなかったので布団がカビてしまい買い替える羽目になった。

床に近い所で活動する子供たちに配慮して年末を待たずに大掃除をした。

……心身の疲労、、、。

ゆっくりできるのは奇跡的に2人が同時に寝てくれた時だけだ。



いざ、次男をおんぶ紐で磔にして気合いを入れ幼稚園説明会へ向かう。

足取りは、重い。沈んでいく感覚だ。

幼稚園に着くと、入園前から仲が良さそうなママさん達も複数いた。

……上の兄弟がこの幼稚園なのかな?

家族経営の幼稚園で、理事長は女性、その女性の息子が園長のようだ。理事長が説明をする。

肌寒くなってきている秋にも関わらず私の手にはハンカチがギュッと握りしめられ既にしっとりとしている。背中はびちょびちょだ。

……とにかく泣かずに耐えてくれ!次男よ!

半分聞いていたような聞いていないような、説明会が終わり全員が出ていったのを見計らって私は理事長に話しかけた。

「長男をこちらへ入園させたいと考えているのですが、今おんぶしている次男は2万人に1人の確率で生まれる先天性の発達障害があります。心臓などに基礎疾患もあります。出来れば次男も長男と同じこちらに来年入園させたいのですが難しいでしょうか?」


理事長は次男の今の状態や通常よりどれくらい発達が遅れているかなど確認してきた。

私はどんな顔でどんな回答をしたのか覚えていない。覚えているのは気付いたら涙がとめどなく溢れ出ていたことだ。


理事長は受け入れることは出来るが来年の入園説明会のときに病気などがどうなっているかにもよるのと、例えば幼稚園とは別に療育センターへ通いつつ、登園する日はお母さんが一緒に教室に居てもらっても構わないと仰った。

実際、発達障害の子やグレーゾーンの子は数人いるらしく、療育センターで発達検査などを親子で受けに行った人もいるとのこと。


理事長は私のことを大変心配していた。入園説明会で涙が止まらないのだから精神状態はあっぷあっぷなのは見てわかる。

療育センターについても管轄などを聞いたので調べてみようと思う。

長男はここの幼稚園に入園を決めた。

次男は発達に合わせて来年また考えよう。

なにせ来年の3歳までに自力歩行が出来るようになっているかも分からないのだ。



カツオにパンフレットを見せる。

「あぁ、いいんじゃない?近いし」

……まぁ近いにこしたことはないが。



願書を出して入園準備をする。

幼稚園に行き制服や体操着のサイズ合わせをしたり、必要な道具を買い揃える。

スモックと帽子は好きにワッペンや刺繍をして良いとのことで、私はフェルトを切って手縫いの刺繍糸の色が映えるように装飾した。赤白帽も同じように装飾する。これなら行事のときに長男を探しやすくなるはずだ。

手提げ袋には長男が好きなカーズのワッペンを貼ってあげる。給食袋やカラトリー、水筒等も何店舗か周りカーズを探した。

ワクワクがとまらなさそうな長男の笑顔。

……ママもがんばるからね!



入園前に届いた制服を着て写真屋さんで記念撮影をした。可愛すぎてつい多く写真を選んでしまったので少し予算はオーバーだが構わん!

……両親用にキーホルダーは余分に作ろう。



長男は3歳に、次男は2歳になった。

入園前だけどまだオムツが取れず、おねしょもしてしまう長男。面談の時に登園していれば自然と取れるから大丈夫ですよと言っていた。暫くはオムツ持参とのこと。

次男はハイハイが出来るようになった。

アンパンマンカーをハイスピードで乗る兄を、自分の全力で追いかける次男。

それを華麗に撒く長男。ケラケラ笑っている。

何往復も繰り返す。撒かれているのに喜ぶ次男。


今年の誕生日ケーキは冷凍配送の卵を使っていないものを選んだ。

さすがに卵を使わずにフワフワのスポンジケーキを作る自信は無い。

代わりにピザなどのパーティ料理は卵抜きの手作りがほとんど。結構、大変。

口の周りをべちょべちょにしながら人生で初めてのピザを食べる次男。思っていたよりも食べる、食べる、食べる。

どうやら気に入ったらしい。

サイゼリア並のピザ1切れ半は食べたと思う。

焼きすぎずにしっとり系に作ったたとはいえ、まだ前歯がちょこっとしか生えていないのにどうやって咀嚼してるんだろう。

ケーキに関しては飲んでると思う。

苺は乗っていないのでスーパーで買ったものを乗せている。あっという間に長男に取られた。

……私、苺が1番好きだけど、、、許す!!



そんなこんなで再びの【お年玉回収】だ。

……子供たちよ!稼ぐのじゃあー!

カツオの実家に行く。

……はよ帰りた。



次男の病気やウィリアムズ症候群はというと、

3ヶ月に1度こども医療センターに通っている。

バルーン拡張手術で2泊3日の入院を2度していて今回は3度目のバルーン拡張手術。

大抵、木曜日に入院と絶食し金曜日に手術、土曜日に退院というスケジュールだ。

手術室へ送り出すと約2時間弱で終わる。



はずが、その日は2時間経っても手術室から出て来なかった。

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