第77話 息子たちの育児 第2章 4
いつも1人のお母さんだけなかなか捕まらない。
どうやら預かり保育を利用して19時にお迎えに来るようで、共働きで仕事が忙しいようだ。
子供の名前と顔は覚えているので、見つけ次第確保!が本日の任務であった。
今日は幼稚園が始まって初めての授業参観。
そして母の日である。
恐らく、ターゲットは現れるに違いない。
狭い教室にギュウギュウの大人と子供。
背中には磔の次男。
行事の時にはカメラマンさんがいる。
数日後に幼稚園の廊下に写真が貼り出され買いたい写真の番号と枚数分の金額を提出する。
その1枚に、手にハンカチを握りしめて幼児用の椅子に座り長男の作った作品を眺めながら必死に笑顔を作る自分の写真があった。
……私、こんな顔してるんだ、、、。
その写真の私の左肩に小さな手が乗っており、
心霊写真かと思って一瞬本当に怖かった。
……次男おぶってるの忘れとった。
無事に授業参観が終わり長男がクラスから出てくるのを見つつ、ミッションを遂行する。
!!ターゲット発見!!
帰り際にすかさず3人で取り囲む。
結局、何のミッションだったのかは覚えていないが無事に成功したようだ。
聞くとうちのすぐ先に住んでいた。
送りも早くお迎えも遅いので会ったことがなかったが、その日は途中まで一緒に帰り、迷ったが聞いてみた。
「もしかして、妊娠されてますか?」
「あ!そうです!」
もう少ししたら産休を取るらしい。
次男のことは何となく知っていたようで
「うちのも心臓の手術したんですよ」
「え!そうなんですか!?」
「だから同じように白く傷ありますよ」
Tシャツの襟から傷が見えてしまうのだ。
「まだ狭窄が治ってないのでこれからも定期的にバルーン手術が必要らしくて」
「大変だけど治るといいですね。うちのは心臓の方は大丈夫で一応病院には定期検診に行ってるんですけど、それとは別でもしかしたらADHDかなぁって思う時があって。発達障害の検査とかしました?」
「うちは心疾患から先天性の遺伝子障害が見つかったんですよ。ウィリアムズ症候群っていって2万人に1人くらいらしいです」
「特徴とかあるんですか?」
帰り道のちょうど車が通らない地帯でしばらくの間お話をした。
ここでも共感してくれる人が居るというのが、こんなにも心強いなんてと改めて感じる。
周りの子供たちはみーんな健康だと思っていたので、自分だけにしか分からないと思っていた不安を分かち合える人がいた。
家族でも医者でもない第三者からの共感。
自分の心が温かくなっていく気がした。
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