第88話 息子たちの育児 第3章 9

今、私は幼稚園バスに乗っている。


行先は木のアスレチックがある公園だ。

今日は【園児だけ】の遠足。

……完全に補助の先生やん。


残暑残る秋。

既に時遅しな気がするがUVカットパーカーを着て帽子とフードで日焼けを防ぐ。


アスレチックは次男の大敵。

みんなが我先にと登る中、片足をかけてやめ。

片足をかけてやめ。全く登れない。

丸太の平均台に関しては乗せた瞬間に泣いた。

ウィリアムズ症候群は空間認識能力というものが乏しい。母親の私にも次男が空間をどう見えているのかわからない。

あくまで想像だが、距離感もつかめない方なのでバンジージャンプを飛ぶ直前の足場のような感じなのかなと思っている。

40cmくらいの高さの丸太にも乗せてみたが世界が終わるんかっていう顔で怖がって泣くので、今日も平地で遊んでもらうことにした。


お昼はブルーシートを敷いてお弁当を食べる。

いつも思うが、みんなお弁当が可愛い。

うちは基本的に冷凍食品がメイン。長男には卵焼きやうずらの卵煮などの卵料理を入れてあげられるが、次男はそれが出来ないので長男の分だけ作るのが大変に面倒。私自身お弁当を作るのが好きじゃないのでお金で楽を買っている。

卵不使用の冷食おかずなのでレパートリーは全然ない。そもそもプチトマトサイズのおにぎりを1個しか食べないのに手間暇かけたくない。

デザートにぶどうを持ってきたが次男は食べてくれなかったので代わりに食べる。

……午後の部、つらー。


お昼の後、1時間ほど遊んでバスに向かう。

次男は私に抱っこされている。

遠足に来たのに疲れてグズり、抱っこ抱っこと泣いてバスに乗り遅れそうだったからだ。

足早に歩く私をカメラマンさんが写真に撮る。

後に掲示された写真を見て自分がどれほど日焼けをしているか目の当たりにしガックリした。

この遠足で首元がTシャツ焼けしたのだから。


幼稚園に戻ってきて帰りの会をする。

最後にお楽しみの肝油ドロップをもらう。

お迎えの時間になりママさんたちがわらわらとお迎えに来る。

……ぐ、ぐはぁっ!疲れた、、、。

……長男よ、はよぅ帰らせとくれ。


どんなに疲れていても母親業に待ったはない。

牛乳大好きブラザーズは1日1リットルを平気で飲んでしまうので今日の買い物も牛乳が重いこと重いこと。

前後に子供を乗せた電動ママチャリのハンドルにちぎれそうな袋を下げて家に帰る。

……パルシステム利用しようかな。

この前ポストに入っていたチラシを見る。

骨抜きされた魚や、無着色の加工食肉、うちのお弁当に入れられそうなおかずもある。

2人を呼んで食べたいものがあるか聞いてみる。

長男はやはり魚に食いつき次男はにゅーにゅーと言っているので牛乳だ。

お米はカツオがいる時を狙って買っていたが宅配ならそこも楽が出来そうだ。


子供に必要なものは大抵うちの両親が購入してくれるのでとても助かっている。

今の状況がどれほど大変かわかってくれているのだと思う。

カツオも仕事をがんばってくれている。

くれているが今週末は会社のバーベキューだ。

心の底から行きたくないが子供の安全を守るためには犠牲は必要だ。

……自己犠牲。

ちなみに私は運転免許証を持っていないのでカツオにはノンアルコールで我慢してもらう。

さすがにバスと電車では行けない。

ここの折り合いを付けるのに少々揉めたが子供を盾にした私が有利となる。

……へっ!

遠足に付き合った週にゆっくりしたいところで

会社のバーベキューなんて最悪しかない。

知らない人に挨拶をして会話をして愛想笑いをしてわざわざ気を遣いに行くのだ。

なんなら大人に囲まれるより子供たちとアスレチックに行こうと思っている。


こうしてやってきたバーベキュー当日。

とりあえずお世話になっている先輩たちにご挨拶をして準備を始める。

炭おこしからの準備は男性陣がやってくれたので女性陣はお皿や飲み物などを準備した。

「かんぱーーーい!!」

子供たちは一通りお肉やジュースをかきこんだ後に一目散にアスレチックへ向かう。

「気をつけてねー!」

「怪我しないようにねー!」

……え?誰もついて行かないの?

「私、子供たちとあっち行ってくるね」

カツオに伝えて追いかける。

……1番年上の子でも小学生。

……何かあったらどうするんだろう?

……やっぱりついてきて良かった。


遠足のアスレチックよりもはるかに難易度が高いので次男は平地で遊びつつ1人で何人もの子供たちの様子を確認する。

……なんで休日にまで補助の先生なんだよ!

ふつふつと怒りが込み上げる。

水分補給様にペットボトルを持って向かったので脱水症状にならないよう途中で飲ませる。

次男に関してはオムツも気にしなくてはいけないのでさっき替えておいて良かった。

「おーい!帰る準備するぞー!」

知らん誰かが呼びに来た。

最後まで子供たちの様子を見に来る大人はいなかった。

帰りの車の中で爆睡する長男と次男。

私は疲労もありかなりイライラしていて家に着くまで無言で座っていた。

家に着くなり嫌味のように発泡酒を飲み直されてさらにイライラする。

ドロドロ汗ベチャの2人と一緒に先にお風呂に入りバーベキュー楽しかったかなど話をする。

夕飯はあるもので簡単に済ませて寝かしつけ、

私もさっさと布団に入る。


長男が小学校に上がる前に離婚して実家に戻るか近くに住むかしようかな。

と、本気で考え始めた。

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