第7話
「ん~~…」
寝ていた人物が、眠そうな声を出した。
思わずビクッとしてしまう。
その人は無意識なのか、私をギュッと抱き締める。
そして、私の体に顔を埋める。
かと思えば、いきなりパチッと目蓋を開けた。
瞳の色は、濃いグレー。
…外人だろうか?
だとしたら、英語なんて喋れない。
会話は…携帯の翻訳機能を屈指しながらじゃなきゃ無理だ。
「あれ?
あたし、寝ちゃったんだ…」
ぷっくりと、それでいてほのかにピンク色の口唇からは、流暢な日本語が発せられた。
そこには安心した。
と、不意に目が合った。
お互いに言葉を発するでもなく、見つめ合う形になる。
1秒、2秒、3秒。
4秒目に差し掛かる前に。
「…ど、どちらさん?」
カラカラに渇いた喉から、一生懸命出した自分の声は、やっぱりカラカラで。
私の言葉を聞いた彼女はハッとすると、私から体を離した。
そして向き合う形で座ると、ご丁寧に三本指をつきながら、深々と上半身を前に倒す。
……胸の谷間に目がいったのは内緒だ。
「初めまして、ご主人様」
素っ裸の美女が、頭を下げながら、私をご主人様と呼んだ。
開いた口は塞がらないし、頭は情報の整理が出来ずにフリーズしているし、美女の体はエロいし。
体を戻した美女は、私と視線を合わせると、太陽のように眩しく微笑んだ。
そして。
「あたしは『福の神』
貴女を幸せにする為にやってきました」
なんて言うんだから、その場からダッシュで逃げ出したかった。
それが彼女との『出逢い』
いつもの土曜日が、ぶっ飛んだ土曜日になったのは、
人生で一回きりであってほしいと願った。
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