第13話

「では、改めて契約の話を。

 こちらの契約書に、ご主人様(仮)のお名前と、あたしに付けていただく名前をご記入していだだきます」


「あんたの名前を決める?

 もう名前があるんじゃないんか?」


「あたしは福の神ではあるのですが、まだ正式に神という訳ではないんです。

 そうですね、神様見習いと言ったところでしょうか」


「あんたこそ、『福の神(仮)』って名乗った方がいいじゃんか」


「お黙りやがって下さい、あたしはまごうことなき神です」


「…あっそ」


蓮は適当に返事をすると、大きな口を開けて欠伸をした。


「ちょ、真面目に聞きやがって下さい!

 正式に神になれたら、そこで初めて名を貰う事が出来るんです。

 が、今は見習いなので、人間に名前を付けてもらうのが決まりなんです。

 ので、真面目に、とっても真面目に考えて名付けて下さい」


「真面目ねえ…。

 『福の神(笑)』でいいんじゃない?」


「おいこら、真面目に考えろって言ったっしょ!?

 何を聞いてたんだ、こらあ!」


「朝っぱらから元気がよろしいこって。

 いきなり名前を考えろって言われたって、そうすんなり浮かばねえって。

 一応性別は女でいいんだよな?」


先程見た女性の裸体を思い出し、顔を少し赤くする蓮。


「まあ、性別は特にないというか、決めてないというか。

 一応男性の前では女性に、女性の前では男性になって現れたりしてましたが、ご主人様が望む見た目や性別に変える事もありました。

 幼女がいいと言うご主人様もいれば、めっちゃイケメンな男子がいいと言うご主人様もいましたし」


「え、見た目や性別変えられんの!?

 …いや、ちょっと待て。

 何で私の前には女性で現れた?」


「ええ、そんなん楽勝ですもん。

 ご主人様(仮)は、女性の方がお好みかと。

 昨日も女性とホテルから出てこられてたじゃないですか」


「み、見てたんか!?」


「何なら、ホテルの部屋でナニしてたかも見てましたよ?」


「ヴァァッァァァァァァァッ!!??」


「大丈夫です、あたし百合も好きですし、BLも好きです。

 あ、オネショタは苦手です」


「んなこたぁどうでもいいっ!

 私のプライバシーを侵害して何が楽しい!?

 てか、どうやって見てたんだよ!」


「空から見てました。

 主となる人の生活を、1ヶ月程見なくてはいけないんです。

 あまりにも自堕落な生活をしてたり、犯罪めいた事をしていたり、精神が病んでいて会話やコミュニケーションが取れない等、そういうのを見るんですよ」


淡々と説明する女性をよそに、蓮はひたすら頭を両手で抱えていた。

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