第14話

いろんな気持ちが、雪崩のように崩れ込んでくるから受け止めきれない。

1ヶ月もの間、空から見ていた?

昨日の人とのやり取りも?

その前の週の人とも?

またしても、汗が止まらない蓮は、真夏でもないのに額が汗で湿っていく。


「ご主人様、なかなかやらしい顔つきでしたが、相手の女性もまたたまらん……あっ、最初から最後までなんて見てませんですからね!?

 ほんっのちょっとです、まじです!」


その慌てぶりは、嘘を自ら露呈しているのと同じだろと思ったが、そんな事にかまけてる余裕は皆無で。


「こほんっ。

 こ、この1ヶ月間ご主人様(仮)を見てましたが、犯罪染みた事もしてませんし、心身共に健康。

 コミュニケーションにも問題はなさそうでしたので、ご主人様(仮)の元へやってきました。

 …ご主人様(仮)、あたしの話聞いてますか?」


「…人様のその、なんだ、そういうところを見ても、恥じらいとかないんか?」


「仕事ですし、今までもそうしてきましたし、特に恥じらいとかはございません。

 ですが、ご主人様(仮)が仰るように、プライベートなところを見てしまうのは、仕事といえども申し訳ないと思っております。

 どうぞ、お許し下さい」


深々と頭を下げられたものの、なかなかどうして、やり場のない気持ちを捨てきれず、歯痒さが体を這う感じが嫌だなと蓮は苦虫を噛む。


「ご主人様が誰を、何を、男性を、女性を好きになろうと、あたしには関係のない事。

 それこそプライベートな事ですので、契約をしても何ら問題はございません。

 あ、契約の話から逸れてしまいましたね」


仕事だからといえ、『貴女のセックスしてるところ、こっそり見てました、さ~せん』で済ませられる事の凄さに、驚きを隠せなかった。


「あたしの性別は如何なさいますか?

 男性が良ければ、男性に変えますよ?

 お好みの容姿があれば、仰って下さればそのように致します」


「…そのままでいいっす」


正直、見た目は派手だが、嫌いな方ではない。

が、それを口にするのは何だか悔しい気がしたから、蓮は何も言わない事にする。


「あたしの見た目、お気に召しました?」


「……別に」


目を反らしたら負け。

そんな言葉が頭に浮かんだが、反らした蓮だった。

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