第67話

「これ、カップルプランじゃん」


「そうですよ?」


「うちら、カップルじゃないじゃん」


「酷いっ、あたしとは遊びだったんですか!?」


「誤解を生むような発言を大声でするな!

 …けど、このプランは確かにお得だな」


「でしょ?

 男女のカップルでも男×男でも、女×女でも、カップルはカップル!

 カップリングは無限大!

 そもそも、『貴女達はカップルですか?』なんて聞かれやしませんよ。

 ので、ここのホテルにしましょ」


「まあ、そりゃあそうだけどさ。

 私の事に付き合わせる形になるじゃん」


漸く濡れていた口元を拭ってから、ウーロンハイを飲む。


「私のお仕事は、蓮の幸せにする事は勿論ですが、人々の暮らしとかも見るのもお仕事の一環です。

 それに違う土地に行けば、その土地の神様にご挨拶をする事も出来るので、一石二鳥なんですよ。

 美味いもんも食えて、素敵な温泉に入れるなんて、こんな美味しい話なんてないでしょうに」


「…前述は建前であって、結局美味いもん食って、温泉に入りたいだけじゃないんか?」


「ンナ事ハナイデスヨ。

 それとも、あたしがご一緒だと迷惑ですか?

 それか、他に一緒に行きたい人がいらっしゃるとか?」


「清々しい程の棒読みだな。

 …別にあんたと一緒に行くのは嫌じゃないし、他に行きたい人はいないけど」


「じゃあ決まりですね!」


再びスマホを向けると、椿はそのまま操作を始める。


「お、おい」


「……よっしゃ、ホテルゲットだぜ!」


「仕事早いな!?」


「あとは移動手段だけですね。

 新幹線でよろしいですよね?」


「は、はあ、そうすっね」


「新幹線、新幹線、と。

 あ、グリーン車が空いてるんで、グリーン車にしちゃいますね」


「ほあぁっ!?」


「これでよし!

 さあ、あたし達の楽しい夏休みの幕開けですね!」


「ちょちょちょっ、こんな贅沢三昧いいんか!?」


「いいじゃないですか。

 蓮は今まで沢山頑張ってきたんですし、ご褒美を貰う権利はあるんですから。

 貰えるもんは貰っとけですよ」


そう言って椿はにこりと笑う。

最近蓮は、この笑顔を前にすると、反論する気が失せる事に気付いた。

美人は得だよな、と心の中で思う。


「新しい洋服買わなきゃ!

 あ、水着も用意しようかな。

 このホテルの近くに、プールもあるんですって。

 優待価格になるみたいですし、行きましょうね」


「プールでも海でも泳がんから水着はいらん」


「蓮が自分で水着を買わないなら、あたしがぷりち~な水着を買って、蓮にあげますからね」


「いらんわ!

 そんなら自分で買うわ!」


けらけらと楽しそうに笑う椿を見て、バレないように目を細める蓮だった。

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