木漏れ日の中でキスをして。

あきら(ただいま休養中)

はじまり

第1話

残業のなかった金曜の夜。

作業着から私服に着替え、タイムカードを打刻して会社を出た。


駅まで歩き、電車に乗って待ち合わせの駅を目指した。

改札を抜け、駅を出ると、適当なところを見つけ、ジャケットのポケットから携帯を取り出し、LINEを起動する。

相手にメッセを送ると、10分くらいしてから相手の女性がやって来た。

軽い挨拶を済ませると、どちらともなく歩き出す。


目的地はラブホテル。

慣れた様子でパネルから部屋を選び、フロントでキーを貰って、エレベーターに乗り込んだ。


部屋に着き、先にシャワーを浴びた。

バスローブを纏うと、ベッドで煙草を吸いながら相手を待つ。


それまで聞こえていたシャワーの音が止まり、やがて同じようにバスローブを纏った相手がやって来た。

歳は自分よりちょっと下。

本名も知らない。

出会い系アプリで知り合った、『赤の他人』


煙草を灰皿に捨てた。

まだほんのりと煙草の煙が漂う空間。


相手もベッドにやってきて、隣に座った。

少し濡れた毛先が、頬に触れた。

そして、口唇に相手の口唇が触れる。


キスをする。

最初は控え目に。

わざとらしく、徐々にキスの音を大きくしていく。


バスローブをすり抜けて、胸元に手を入れて。

ふくよかな乳房に、優しく触れる。


小さく声を出したから、それが合図。

相手の体を刺激していく。


やがてお互い裸になって、息を乱しながら、求めて与えて。

濡れた体が火照っていく程、いじらしく手を動かして。


上に乗った相手を見ながら、『腹減ったなあ』なんて考えたり。

昼から何も食べずにいるんだから、当たり前かなんて思って。




達した後、一服してから2人でホテルを出た。

駅に着くと、相手は『また逢える?』と聞いてきた。

作った笑顔を浮かべながら、『2度目はないんだ、ごめんね』


適当に別れるとさっさと電車に乗り、ジャケットのポケットから携帯を取り出し、LINEを起動させると先程逢った相手のデータを消した。

もう逢う事はない。

そう、言葉通り『一夜限り』

後腐れも何もない。


何人の人とセックスしたっけ。

とりあえず言えるのは、片手では収まらないという事だ。

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