第17話

ぐぅ~


「あらご主人様、放屁ですか?」


「んな訳あるか!

 腹減ったんだよ」


こんな状況下でも、腹はきちんと空く。

鳴いた腹を摩りながら、蓮は欠伸をする。


「は~、飯どうしよ。

 何もないんだよな」


「朝食ですか?

 お任せ下さい!」


すっくと立ち上がった椿は、作った拳でボスっと自身の胸を叩いた。


「何だい、魔法で飯でも出してくれんの?」


「そんな訳ないじゃないですか、ウーバーイーツで頼むんですよ」


「うっわ、くっそ現実的。

 魔法でポンっと出してくれんのかと思ったのに」


蓮の言葉をスルーしながら、椿は掌からスマホを出した。


「え、ちょっと待て。

 神様もスマホとか使うの?」


「今時スマホなきゃ、何も出来ないじゃないですか」


「……あ~も~、アホくさ」


立ち上がった蓮は、キッチンに向かうと煙草を吸い始めた。


「蓮は何食べるんですか~?

 女体盛りですか?」


「ごふぉっ、ふっざけんな!

 私はマック食べたい」


「はいはい、かしこまり」


神様がスマホを使い、ウーバーを頼む。

何だか何とも言えない光景だが、受け入れるのにそう時間はかからんだろうと蓮は諦めた。


注文を終え、暫くすると注文した商品が届き、2人で小さなテーブルを囲んだ。


「あ~、マック食べるの久し振りだなあ」


嬉しそうにハンバーガーの包装紙をめくり、大きな口を開けるとかぶりつく椿。


「神様って飯食うんだ」


「食いますよ。

 まあ、食わなくても生きてられますが。

 蓮は痩せすぎだし、もうちょいちゃんと食べた方がいいですよ」


「作るのめんどいし、疲れてると食べるのもめんどいんだよ。

 飯より睡眠重視」


「睡眠も大事ですけど、食事も同じくらい大事なんですからね。

 タンパク質、食物繊維、発酵食品をバランスよく食べて…」


「おかんか!

 食いたい時に食うからいいんだよ」


「美味しいものを食べて、気持ちを幸せにする事も大事なんですからね」


お互いガツガツとハンバーガーを平らげ、膨らんだ腹を撫でる。


「で、結局あんたは私に取り憑いてどうすんのさ?」


「あたしは悪霊じゃねえから!

 蓮と生活を共にしながら、人々の暮らしを見たり、蓮の叶えてほしい事を早く叶えられるようにお手伝いをします」


「え、神様がほいほい叶えてくれるんじゃないの!?」


「ドラえもんじゃあるまいし、ほいほい叶えられる訳ないじゃないですか!

 叶える為に徳を積めって事です。

 その徳が早く積めるように、あたしの力をちょっとだけあげます」


「何だよそれ、詐欺じゃん」


「あたしは一言も何でも叶えてあげるなんて言ってねえですから!」

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