第79話

「なあ、さっきのナンパの兄ちゃん達、何で急に腹を押さえながら、どっか行っちゃったんだ?」


ホテルに戻ると、部屋でしばし休憩をする事に。

エアコンの冷たい風で涼みながら、椿が淹れてくれたお茶を飲む蓮が椿に問い掛ける。


「煩いし、鬱陶しいし、邪魔だったから、魔法でお腹を下させたんですよ」


にっこりと微笑みながら言う椿に、苦い顔を浮かべる蓮。


「…何と恐ろしい。

 ナンパの兄ちゃん達、災難だったな」


「あたしが綺麗すぎるのが罪なんですわん。

 さしずめ、あたしは目映く輝くダイヤモンドですかね」


「ふっ」


「何で鼻で笑うんですかあ!」


ここまで自信満々だと、清々しさを感じるなと感心する蓮を、椿は口唇を尖らせながら見る。


「なんだい、ダイヤモンドさん」


「バカにしやがりおって。

 あたしは神界では『お嫁さんにしたいランキング』で1位を取った事もあるんですからね!」


「ダイヤモンド、関係ないじゃん」


お茶を飲んだ蓮は、畳に寝転がり、大きな欠伸をした。


「久々に遊んだせいか、疲れが半端ないな」


「海に入ったのもあるんですよ。

 もうちょいしたら、露天風呂の時間ですから寝ないで下さいね」


うとうとしていたが、かっと目蓋が上がる。

そうだった、忘れていた。


「お風呂の後にご飯ですから、お腹が空いてるかもですが、我慢して下さいね。

 ちょっと蓮、聞いてますか?」


「えっ、ああ、聞いてるよ」


先に夕飯じゃなくて良かった。

きっと緊張しすぎて、食事の味なんて解らなかった筈だ。


いやでも…。

さっき水着姿を見たのだから、多少なり免疫は出来た筈だ。

何より、彼女の裸は1番最初に見たしな…。


ほろ苦い思い出だ。

寝転がると寝てしまいそうだし、色々な事を考えてしまいそうだから、体を起こすと煙草を吸う事にした。

煙を燻らせていると。


「蓮はいつから煙草を吸ってるんですか?」


「ん~、仕事を始めた頃かなあ。

 ストレスで吸うようになった」


「今はストレスがないんだから、吸わなくてもいいのでは?」


「鋭いツッコミありがとう。

 習慣になっちゃったから、なかなか止められんのよ。

 あんたは煙草吸わんの?」


「煙管でしたら吸ってましたね。

 けど、気付いたら吸わなくなりました。

 煙草もちょろっと吸ったりしてましたよ」


「止めれてすげ~ね。

 私はまだ喫煙者でいいや」


「健康の為にも、程々にして下さいね」


「へいへい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る