第71話

目的の駅に着くと、本格的な夏休み前ではあるが込み合っていた。

人混みを何とか通り抜けながら、泊まるホテルのタ送迎者を見つけ乗車した。


「後でレンタカーを借りに行きましょうか。

 その方が安いですし、行きたいところにも行きやすいですし。

 レンタカーセットのプランがなかったので、ちょっと手間になってしまいますがよろしいですか?」


「大丈夫だけど…私、免許は持ってるけど、ペーパーだよ?」


「運転はあたしにお任せ下さい」


「神様も免許持ってんの?」


「神によりけりですけどね。

 あたしは欲しかったので取得しました」


「…神界の免許、こっちで使えんのか?」


「その辺の心配は大丈夫、手続きも更新もきちんとしてますので」


「…あっそ」


色々ツッコミを入れたかった蓮だったが、もう何も言うまいとやめた。



街中は賑やかで、観光地もあって人の出も多い。

暑さは関東と変わらず。

駅周辺はお土産店が多く、散歩がてらに買い物をするのも楽しそうだ。


ホテルに到着すると、椿にチェックインを任せる。

スタッフに案内された部屋はツインルーム。

窓の外には海や空が広がり、気持ちのいい景色が見える。


「お~、すげえな」


「部屋も広いですね。

 過ごしやすそうです。

 お茶飲みますか?」


「うん、飲む」


部屋の何処を見ても、掃除が行き届いていて綺麗だ。

風呂もトイレも、申し分のない。

久々の畳に、気分も上がる。

(蓮が住んでる部屋はフローリング)


「ホテルに来ると、探検したくなりますよね」


「自分の部屋とは違うからかね。

 しかし、こんなに綺麗な部屋で煙草を吸うのも申し訳ないな。

 喫煙ルームでありがたいけども」


「まあ、そんなに構えなくて大丈夫ですって。

 ほらほら、お茶にしましょ」


椿に促されテーブルの方に行き座ると、椿が淹れてくれたお茶を飲む。


「とりあえず、一息入れたらレンタカーを借りに行きましょう。

 その後は昼食にしますか。

 蓮は何処か行きたいところはありますか?

 海かプールに行って、水着姿の姉ちゃん達をニヤニヤしながら見に行きますか?」


「あんたの頭をぶん殴る用のこん棒を買いに行きたいんだが」


「さらっと物騒な事を言わんで下さいよ!」


と、椿がテーブルの上に置かれていたチラシに目をやる。


「明日は夏祭りと、花火大会があるみたいですよ」


「そうなん?

 人が凄いんだろうな。

 てか、祭りも花火大会も、何年も行ってないや」


「じゃあ、行きましょうか。

 あたしも神にご挨拶に行けたらと思っていたので」


「別行動する?」


「挨拶はすぐ終わらせるので大丈夫ですよ。

 お心遣い、ありがとうございます」

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