第82話

「神様って事を悪用されたり、リスクは高いじゃん」


「そうですね。

 けど、悪事を働けば罰は下りますから。

 因果応報ってやつですよ。

 蓮も気を付けて下さいね」


「解ってるっての。

 てか、私は悪事は働かん」


貴女がそういう人じゃないのは、重々解ってますよ。

そう言ったら、この人は照れて悪態をつくんだろうな。

思い浮かべたら面白く、椿は軽く笑う。


「夕飯、楽しみですね」


「んだな」


何て事のない会話。

いつものやり取り。

その心地良さが、蓮は好きだ。


「明日はプールはやめて、お祭りに絞りましょうか。

 軽い散歩くらいはしましょう」


「プール、行きたかったんじゃないか?」


「またナンパ三昧になるのは嫌です」


「祭りに行っても、同じなんじゃないか?」


「お面でも買って付ければ、問題ないでしょう」


「…返って目立つんじゃない?」


「だ~いじょうぶ、あんまりにもしつこかったら、拳で黙らせますから」


「ぼ、暴力は駄目だろ!?」


「まあまあ、細かい事は気にしない。

 さあさ、そろそろ上がりますか」


勢いよく立ち上がった椿の尻が、蓮の瞳に飛び込んできた。


「ちょっ、おいいぃっ!?」


「ん?

 どうしました?」


そして、続いて飛び込んできたのは椿の…。


「こっちを向くなあっ!!!!」


ばっちり見えてしまった蓮は、温まって赤かった顔を更に赤くする。


「ん?

 あ~あ~、いや~ん、蓮のえっち☆」


「さ、さっさとタオルで隠せ!そして出ろ!」


「こんなん、いくらでも見てきたでしょうに~。

 じゃあ、先に上がりますから、蓮も上がって下さいね。

 のぼせて溺れたら大変ですから」


「わ~った、解った!」


けらけら笑いながら、椿は風呂場から出て行った。


「…全く、もっと恥じらいってもんを持てよな」


ぼそりと呟く。


「無防備すぎるって…」


蓮も風呂から上がり、脱衣場に向かった。



2人で部屋に戻り、暫くしてから食事を済ませた。

沢山の魚を使った料理や、刺身に舌鼓。

酒を飲みつつ、料理を堪能したのだった。


食後は部屋でテレビを観ていた蓮だったが、日中の疲れと、程好い酔いのせいか目蓋が重くなってきた。

椿に促されベッドに潜ると、そっと目蓋を閉じる。


いつもならまだ寝る時間じゃないのに。

朝も早かったから、堪えたのもあったんかな。

そんな事を考えていたら、知らぬ間に眠りの世界に落ちていった蓮だった。

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