第5話
ゆっくりと目蓋を開く。
もう朝か。
夢を見ていたような、そうじゃないような。
けど、いつもより眠れた気がする。
今、何時だ?
開けっぱなしの窓から風が入り、カーテンが揺れて、明るい陽射しが見え隠れ。
枕の近くに置いておいた携帯を取ろうと、体を動かそうとすると。
「ん?」
自分のすぐ近くに、何かがある。
いや、この感じは…『居る』が正しいと言えよう。
携帯がある方に体を動かさずに、そこに『居る』ものに右手で触れてみた。
柔らかい。
撫でてみる。
滑らかだ。
これは多分、『人』の『肌』の感触だ。
繰り返し触ってみるが、やはりそれな訳で。
ぼんやりとしていた頭の中が、急に忙しなく覚醒していく。
待て待て待て。
何で人が?
泥棒?
いや、私ヤられた?
…体や下半身に特有の痛みや違和感はない。
それはそれでいいとして。
何故、自分のベッドに人が?
てか、誰?
玄関のドアの鍵は、閉めた事はちゃんと覚えてる。
ベランダの鍵も閉めた。
てか、うちは5階だし、侵入は難しいだろうに。
窓から入るなんて、摑まるところも登るところもないから無理だ。
…変な汗が出てきた。
こういう時、どうするのが正解なんだ?
隣にいる人にバレずにベッドを抜け出したいが、自分は壁側にいるから動けない。
…てか、ちょっと待て。
この人、私にめっちゃ抱き付いてる!?
なおの事動けねえじゃん。
何この状況。
何が悲しくて、朝っぱらからこんなに頭を使わなきゃいかんのだ。
冷静になりたいが、安心材料があまりにも無さすぎる。
…隣の人は…寝息が聞こえてくるから、まだ寝ているらしい。
こっちは慌てふためいているのに、呑気に寝てやがるのに少々腹が立つ。
と、右腕に柔らかい何かが触れた。
温かくて、ふわふわしていて、何とも心地いい。
いや、ちょ、待て。
これ、おっぱい…の感触に似てるんだが。
額やら脇の下から、ドッと汗が出てくる。
女性が私のベッドにいる。
どうして?
連れ込んだはありえないから…入って来た?
昨日の人が実はこっそり後をつけてきて、忍び込んだとか?
いやいやいやっ、それは流石に怖すぎる。
警察…警察だ。
まずはどうにかして、警察に連絡しないと。
けど、動けないのにどうやって…。
てか、バレないように、相手の顔を見てみるか…?
もし全然知らん奴が、隣で私に抱き付きながら寝てても怖いが。
幸い掛け布団は自分の方の足元にある。
(多分、寝てる時に暑くなって蹴とばしたんだろうな)
静かに体を動かせば、見えるだろう。
心臓が恐ろしいくらいドクドクしているが、抑える余裕はない。
意を決して、体を動かしてみた。
ああ、神様。
これは私が散々、男女問わずに体だけの一夜限りを繰り返してきて罰か何かですか?
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