第4章
第54話 新たなクラス
土日を本宅で過ごした俺は、先程家に着いたばかりだ。
明日から学校なので、夕食を食べずにみんなで帰ってきた。
「何で、お隣さんの家がもう出来てるんだ?」
僅か、2〜3日で出来上がった家はとても豪華で綺麗な2階建てだった。
おまけにお向かいのリフォームも終わったようで、足場が撤去され磨き上げられたように綺麗になっている。
「家ってこんなに早く完成するものなの?」
「さあ、どこかで組み立ててきてブロックみたいに積み上げたんじゃない?」
確かにそういい工法もあるはずだが、それでも早すぎるだろう。
何でみんなは気にならないのか不思議だ。
「家は完成したものの外構はまだみたいだ。なんか安心するよ」
全てが終わっていたら、どこか違い世界に紛れ込んでしまったのではないかと勘違いしそうだ。
「あれ、みんなお帰り〜〜どう?楽しかった?」
美幸が俺達の声がしたのか、庭先まで出迎えに来てくれた。
「まあね……」
俺は楽しいというか疲れた。
「私は充実してたわよ。久々に本気を出して訓練できたし」
涼華は師匠と結構激しい訓練をしてたようだ。
「苔あんまし無かった……」
落ち込んでるのは木葉だ。
苔はたくさんあるはずなのだが、お目当ての種類の苔が無かったのだろう。
それとルナは、既にここにはいなかった。
おそらく、壁を登って屋根伝いに自室に戻ったようだ。
「今日はハンバーグだし、ママ気合い入れたからきっとおいしいよ。因みに、あっしも手伝ったし」
夕食の献立を聞いて立ち直った少女がひとり。
すぐさま、家に駆け足で入って行った。
木葉は、苔より団子かな……
「隣ん家、もう出来たんだね?」
「うん、人いっぱい来てたから驚いたし、100人は居たじゃん」
そんなにか?
いったい誰が住むんだ?
まあ、気にはなるがよその家の事をあれこれ考えても仕方がない。
家に入り和樹君に出迎えられてホッとする。邪気の無い笑顔って見てて癒されるよね。
ここに住んで1ヶ月も経たないけど、自分の家に帰って来たって感じがする。
俺にとってこの家はかけがいのないものになっていた。
◇
翌日の月曜日。
学校に行くと、下駄箱のところにある掲示板に人集りができていた。
『マジ、特進クラスって負け組じゃん』
『本当、意味ねえ〜〜』
『でも、何で如月さんまで……』
『私、選ばれなくて良かったあ〜〜』
そんな声が聞こえてくる。
すると、同じクラスの山川君が俺のところに来て「おはよう。水瀬君。残念だったね」と、言われた。
「何が?」
「先週、先生が言ってたでしょう。特進クラスができるって。そのクラスに入る人達の名前が掲示板に張ってあるんだよ。うちのクラスでは、水瀬君、菅原さん、熊坂さん、そして何故だかわからないけど如月さんの名前まであるんだ」
そういえば、角太がそんな事を言ってたっけ。
でも、このメンバーってアレだよね。
なんだか、作意を感じるんだけど……
「あれ、光彦君は知らなかったの?私は教官……じゃなくって権藤先生から土曜日に聞いてたわよ」
「そうなの?」
すると、掲示板を見てきた木葉と美幸が「私(あっし)も同じクラス」と嬉しそうに笑っている。
これで、確定だな。
でも、新学期始まって早々にこんなクラス分けを普通はしない。
おそらく、角太の画策だ。
「今日から新しい教室だよ」
涼華がそう言う。
「じゃあ、水瀬君。クラスは別になっちゃったけど、何か知りたい事があれば僕のところに来るといいよ」
そう言って山川君は去って行った。
新たに設けられた特進クラスの教室に入ると、既に何人かの生徒が来ていた。
席順は決まってないようなので好きな席に着席する。
どうやら、このクラスは学年は関係ないようで2年生や3年生まで見受けられる。
髪が長く机にうつ伏せで寝ている三年生の女子生徒。
不安そうに周囲をキョロキョロ見渡している二年生の坊主頭の男子生徒。
髪の毛を金髪に染めて、ピアスをつけてる二年生のヤンキー男子。
そして、同じクラスだった熊坂美智瑠さんだ。
「思ったより、人数が少なそうね」
涼華は、そう言いながら俺の隣に当たり前のように座った。
「二年生や三年生の先輩が同じとは思わなかったよ」
「本当、でも、楽しそうだし」
美幸は、そう言いながら木葉の隣の席に腰を下ろす。
また、ルナは既に目立たなそうな席に腰掛けていた。
この雰囲気何か嫌な予感がする……
すると、教室のドアが空いて俺達の前のクラスの副担任だった先生。
鹿内真奈美先生が入ってきた。
「え〜〜皆さん、おはようございます。今日からこの特進クラスの担任になりました鹿内真奈美です。よろしくね」
そう先生が自己紹介をするとまばらに拍手がなった。
「このクラスは、特に受験に特化したクラスではありません。高校生は義務教育と違って単位を落とすと落第や退学しなければなりません。そういう人達の補助を目的とした一面も持ってます」
確かに、落第して一年下の生徒達と上手くやっていくには気苦労するだろうし、途中でやめてしまう人も多いだろう。
「ですので、このクラスは学年はありません。一年生だけではなく、二年生、三年先の生徒もいます。ぶっちゃけちゃうと、田舎の分校みたいに対象となる生徒を学年関係なく同じクラスにまとめてしまえ、という感じです」
「先生、授業はどうするのですか?」
「最もな質問です。基本的には課題プリントをこなしていく感じです。また、大学受験を目標にしてる人達には、特別のカリキュラムを組んでいこうと思います。他に質問はありますか?」
「体育とかはこのクラスでするん?」
「はい、このクラスで行います。それと、修学旅行とか林間学校とかは学年に戻って行うという教職員の意見もあったのですが、このクラスで行くことになりました。2〜3年生の生徒は既にこの行事を終えている方もいるでしょうが、幸い出席されていない方がこのクラスに集まりましたので問題ないですよね?」
「ちょっと、先生。私そんなのあっても行かないよ」
そう発言したのは、眠そうに机にうつ伏せていた長い黒髪の女生徒だ。
「下北沢さん、無理にとは言いませんが、出来るだけ参加して下さい。これは学校なりの配慮なのですよ。学生時代にしか体験できない貴重な行事なんですよ」
そう言われて、黙ってまた机にうつ伏してしまった。
その態度は言っても無駄だといった感じだ。
「先生、もしかして1年のあっしらは、毎年修学旅行とか行けるん?」
「その件ですが、現在調整中です。教職員の間でも意見が分かれて決まりませんでした。ですが、2〜3年生がいるので今年は修学旅行と林間学校に行きますよ。旅行先はまだ決まってませんが」
「やったし!」
美幸は楽しそうだ。
でも、2〜3年生は反応が薄い。
「駒場君、何か質問とかありますか?」
鹿内先生が名指しで呼んだ生徒は、金髪ピアスのヤンキー君だ。
「……俺は高校さえ卒業できれば文句はねえ」
ぶっきらぼうな口調でそう言った。
「そうですか、それと池上君は何か聞きたいこととかありますか?」
「ぼ、僕は特にありません」
少しオドオドしてる坊主頭の少年はそう答える。
「わかりました。何かあったら先生に相談して下さいね。それと、このクラスの生徒で登校していない生徒もいます。神泉要さんという女生徒です。彼女は2年生ですので、登校してきたら暖かく迎えて下さい」
一通りの説明が終わり先生も少しホッとしたような顔をしてる。
でも、まだ終わりではなかった。
「では、今度は転入生を紹介します。皆さん、教室にお入り下さい」
すると、ドアを開けて入って来たのは……
「朱雀学園からこちらの学校に転入してまいりました桜宮美鈴です。皆さま、よろしくお願いします」
「同じく朱雀学園から転入してきました三条智恵です。よろしくお願いします」
「同じく朱雀学園から転入してきました霧峰美里です。よろしくお願いします」
マジか……
俺は、呆然とその3人の女生徒を見つめるのだった。
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