第14話


「あれ?おかしいな……」


この世界がファンタジーとなって一週間が経過した。

何時もの様に、俺はダンジョンに出向いて充電しようとしていた時だった。


「どうかなさいましたか?旦那様」


現実世界に生れ出た雑魚モンスターを一掃したクインシーが近づいてくる。

俺は自分が持つスマホを彼女に向けておかしい部分を見せつけた。


「昨日まで、この〈那賀ダンジョン〉はCランクだったのに、今日見てみたらBランクになってたんだ」


ダンジョン検索アプリで周囲のダンジョンを確認する事が出来る。

俺は明日になったらこの〈那賀ダンジョン〉でも攻略しようかと思ってたけど、何故かランクが一段階上がっていたのだ。


「見間違えかなぁ?まあ、別に大した事でも無いけどさ」


俺は頷いてダンジョンの中に入ろうとした。

だが、中に入る前に、彼女の胸が俺の進行を妨げた。


「お待ちください旦那様。まだ旦那様にはBランクは危険です。まだ近くにC

ランク相当のダンジョンがあるのではないですか?そちらに向かいましょう」


彼女は俺の安否を心配してそう言ってくれた。

別にBもCもクインシーが居れば大丈夫だけど、彼女の力に依存している俺が、下手に彼女の言葉を捻じ曲げる事は出来ない。

大人しく彼女の話に乗る事にした。


「じゃあ、他のダンジョンを探そう、ここら辺で近いのは………〈山辺デパートダンジョン〉?みたいだね」


一番近いCランクのダンジョンが此処から二キロ先にあった。

俺は彼女と共に〈山辺デパートダンジョン〉へと向かうのだった。


ダンジョンは建物を媒介に建設されているらしい。

那賀ダンジョンは。那賀さんと言う人の家を媒介にしたダンジョンである様に。

この〈山辺デパートダンジョン〉はデパートを媒介にしたダンジョンだった。

何処となく、入り口が自動ドアっぽく見えるのは、デパートの影響が微かに残っているからだろう。


「それじゃあ、入ろうか」


俺とクインシーは一緒にダンジョンへと入っていく。

カツカツと、薄暗い通路を通って、深い深い闇の中へと向かうのだった。

ふと、俺のスマホが振動していた。

俺は歩きながらその情報を確認してみると、それは〈ダンジョン検索〉からの通知だった。

一体なんなんだろうか、そう思い通知を開いたその時。

俺は目を疑った。



『〈山辺デパートダンジョン〉の情報が更新されました』



『更新前』

『〈山辺デパートダンジョン〉』

『危険度・Cランク』

『報酬・召晶石10個』







『更新後』

『〈刻獄の間〉』

『危険度・Sランク』

『報酬・上位職業〈時空者〉 武装甲〈遅滞秒針アウタータイム〉 召晶石100個』



「ダンジョンが……進化した?」


そう思う他無かった。

今、俺が立つ場所は。

最も危険な迷宮と化していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る