第46話

画面上に映し出される空模様。

蒼い空は虹色の空に染まっている。

上空から降り注ぐ隕石は地面に接着する寸前に虹色の魔法陣が浮かび出す。

その魔法陣は画面一杯に現れると、急に画面が見えなくなった。

……それは、上空から放たれる光によって画面が見え辛くなっていた。


「おいおい……なんだぁこりゃ」


玄武さんは当然ながら、虹色確定演出など知らない。

クインシーはその光を見て忌々しいと睨んでいる。

小春さんは虹色に輝く空を見て、まるで花火を眺めるかの様に小さく「綺麗……」と呟いている。

そして、虹色の魔法陣から爪先が出現し出して、そのままかかと、前足、太腿、腰や臍、くびれから柔らかな胸部、そしてバター色の髪が伸び出した。

現れる女体。服など一切纏わない少女がゆっくりと降りてくる。

そのまま地面に着地……したと思えば、地面にペタリと座り込んでしまった。


「………虹色召喚獣……名前は……」


俺はスマホの画面を確認する。

『〈無知全能の大魔法使い〉』

『レアリティ・虹色』

『契約条件・名前を名付ける事』


無知、全能?

全知全能じゃないのか?

周囲を見渡す、新しい召喚獣。

口を開いたり、閉ざしたり、時に指を咥えてチュパチュパと吸っている。

その行動はまるで赤ちゃんの様で……。


「あ、う……ん」


俺の事をジッと見ている。

俺を主だと認識しているのだろうか。

曇りなき眼が俺を見つめていた。

名前……名前を付けるのか?

えぇと……。


「……サチ?」


その名前はお母さんが、もしも俺が女として生まれて来たのなら、そんな名前を名付けるつもりだったらしい。

咄嗟の事だったから、そんな名前しか思い浮かばなかった。

名前を呼ぶと、彼女は俺の方に手を伸ばして来る。


「あう……う、ぁう」


俺の頬や唇に触れて、その輪郭を確かめる。

俺の事を指先で覚えるかの様に撫で回して口元を緩めた。


「あはぁ……あはっ」


笑みを浮かべる……サチ。ぺちぺちと俺の頬を叩いている。

なにを楽しそうにしているのだろうか。

ぺちぺちと叩く彼女。そして当然ながら、俺に接近するサチに対して苛立ちを覚えている女性が一人。

純白の衣装に身を包む、クインシーキルライン。

その手に握るチェーンソーをヴヴヴと唸らせながら俺とサチの合間に立っている。


何時もながらと言うか、通常運転と言うべきか、今回ばかりは命が掛かっている。多少女性の召喚獣が出ても許してはくれないだろうか。


「あう、あ……うぶぅ」


クインシーの嫉妬など無視するかの様に、サチは四つん這いでクインシーの足元まで歩くと、彼女の足に手を添えて叩いている。


「あう、ぶ、きゃっ、きゃっ」


無邪気な笑みを浮かべてはしゃいでいるサチ。

そんな彼女の姿を見て、クインシーは彼女に対する敵意を失っていくのが分かる。


「旦那様……この子は……」


クインシーは膝を突いて、サチの頬に触れる。

無垢な笑みを浮かべるサチは嬉しそうにしていた。

サチの笑顔を見て、クインシーも心境の変化があったのだろう。


「私たちの子です」


クインシーはサチを抱き締めて笑みを浮かべた。

いや、クインシー、キミの血は通って無いし、俺の遺伝子もサチは受け継いで無いでしょ。





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