第77話

……ふわふわとした感覚。

眼を開けば、其処は庭だった。

ぴよぴよと鳥の声が聞こえる。

心地の良い太陽の光が差し込んで、少し眩しくて目を細める。


「……あれ?」


俺の体、なんだか少し変だな。

軽い。……動きやすい、な。

……なんでタキシードを着てるんだ、俺?

と言うか、此処は何処だ?

俺、確かさっきまで、戦っていた筈なのに……


「テメェー!!」


そう叫ぶ声が聞こえて俺は振り返る。

其処には、タキシードを着込んだつぎはぎだらけの顔面をした金髪のお兄さんが其処にいた。


「お前よォー!神の末裔だろぉーが!」


その喋り方、なんだか何処かで聞いた事あるな……。

ズンズン、と突き進む金髪のお兄さんは握り拳を固めておもむろに俺に殴りかかって来る。


「うわっ!」


俺は咄嗟に防御するけど、拳は俺に届いていない。

恐る恐る目を開いてみると、俺の体に拳が通っていた。

まるで立体映像に手を突っ込んだ様な感じ、俺は別に痛みも苦しみも感じない。


「え、これ……」


「チィ!やっぱ殴れねーか、あぁ、クソ」


苛立ちを隠せないお兄さんはそう捨て吐いた。

何が何やら分からない、俺は一先ず、お兄さんに何者なのか聞く。


「すいません、あの、誰、ですか?俺、何かしましたか?」


そう聞くと、お兄さんは俺を睨みながら、再び舌打ちをする。


「お前は何もしてねー、が。お前ッつー存在が気に食わねー」


お兄さんはそう言う。

なんで俺の存在が気に食わないんだ?全然分からない。

……と言うか、本当に、俺は、このお兄さんと、何処かであった様な気がする。

何処で出会った?えぇと……。


「たく……仕方ねぇのは分かってるっつーの。神の末裔とクソ神は違う、けど……似てるからイラつくんだよ……クソ」


神の末裔と、神は、違う……その言葉で。俺はふと神の事を思い出した。

シュテイルでも、カルサ・エルゴ神でもない……あの、覆面男の存在を。


「……覆面男………」


「あぁ!?んだよ、どいつもこいつもそんな呼び方しやがってよぉー!名前が無いからってんな適当な呼び方しやがって、マジでむかつくぜ、クソがよぉ-!」


……あぁ、まさか。

この人。マータッドに殺された元神だ。

覆面男。

名前は知らないけど、何処かその姿は見た事があるぞ。

けど……覆面男は死んだ筈だ。

なのに、なんで彼はこんな所に居るんだ?


「こういうの、聞くのあれですけど……貴方は死んだ筈じゃ?」


「死んだ?あぁ、死んだっての。お前も死んでるんだろ、何当たり前な質問してやがんだ」


……え?俺、死んだの?


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