第9話

世界にガチャシステムが導入されて三日が経過した。

流石に充電量が少なくなって来たから動かざるを得なくなった。

クインシーはずっと〈楽園の箱庭ミニチュア・ガーデン〉に居たかったらしいけど、このままでは俺がエネルギーが0になって死ぬと言ったら渋々出してくれた。

そして俺はこの三日間、充電をする為にダンジョンに潜り続けた。

初回無料ガチャで手に入れた〈ダンジョン検索〉。

これが中々使い勝手が良い。

周囲にあるダンジョンを検知してくれる他にも、そのダンジョンのランクや、攻略した際にどれ程の召晶石を入手できるか記載されていた。

基本的にダンジョンのランクはEからAで。

Eランクはダンジョン攻略すると報酬として召晶石3個入手。

Dは五個、Cは十個、Bは三十個で、Aはなんと百個も貰える。

流石にいきなりAランクダンジョンに入るのは命知らずな行為だったから、様子見としてEランクダンジョンを中心に活動をしていた。

その結果、俺は三つのEランクダンジョンを攻略し、更にDランクも二つ攻略してみせたのだ。

これで合計19個の召晶石、+モンスターを倒した事で得られるアイテムや硬貨も多く入手する事が出来た。

と言っても、ゴブリンの持っていた棍棒や錆び付いたナイフが中心で、しかもそれらは装備する事が出来ないので、結局そのアイテムも売却する始末だったが。


「随分と硬貨が溜まりましたね、旦那様」


俺のスマホの画面を見ながら、クインシーは白のハンカチで静止したチェーンソーの血を拭っていた。


「うん。大体20万硬貨だね。これで何が買えるワケでも無いけどさ」


俺はショップストアを確認する。様々な生活用品の他、衣服や家を購入する事が出来る。

お金を沢山貯めれば、要塞すらも購入出来るらしいが、其処まで大それたモノは必要ない。危険な目に遭えば〈楽園の箱庭〉で逃げる事も出来るし。


「………ん?」


ふと。俺の目にはある項目が入った。

『召喚獣専用衣類』と言う内容だった。

俺はそれをタッチして内容を確認する。

ある専用のキャラであれば、衣服をチェンジする事が出来る、と言うものだった。


「ねぇ、クインシー。新しい服、何かいる?」


と、そう聞くと、クインシーは目を開いて俺の首に腕を回して接近した。


「旦那様。この私にお召し物をプレゼントして下さるのですか?あぁ、なんて素敵な、旦那様、私の旦那様」


嬉しそうにしている、とても良い事だが、耳打ちする様に喋るのは止めて欲しい。耳が痒くて仕方が無い。


「俺、こういうの分からないからさ、どれが良いか自分で決めてくれ」


無駄使いは良くないとは思うが、これはクインシーに対する労いだ。

俺の為に戦ってくれる彼女に何かしらのご褒美があっても良いだろう。


「【ドレス】【メイド】【スーツ】……私にはこの三つしか無い様子ですね」


あ、そうなんだ。もっと普通の衣服があると思ったけど、無かったらしい。

一着10万。購入すれば資金の半分が消えるけど、まあいいか。


「どれに、しましょうか……」


そして何故か、クインシーが画面では無く俺の横顔を見ていた。

人差し指で服を指差しながら、その目線は俺に注視している。


「【ドレス】……【メイド】……【スーツ】……【メイド】?……ふふ、旦那様、この衣服に反応しましたね」


微かに瞼が動いていたのがばれてしまったらしい。

そして彼女は迷いなくメイドを選択した。


「え、俺の好みで決めるの?いや、確かに衣服は少ないけどさ……」


「私の好みは、旦那様の好みですから……新しい衣装で、どうか私めを可愛がってくださいませ」


『衣装を変更しますか』の項目に俺は『はい』を選択した。

すると、彼女の花嫁衣裳は一瞬で光輝き、新しいメイド服に変更された。

メイド服、と言ってもそれは過激なモノだ。何せ胸部を強調させるベルトを巻き付けて。胸元が大胆に開いている。足元まで隠れている筈のスカートは前が薄い生地で彼女の黒いパンツとガーターベルトが丸見えだった。


「まあ、これは少し過激な事……けれど、どうでしょう?旦那様」


「うん……なんだか煽情的だよ」


そんな人並みな感想しか言えなかった。


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