第52話

「〈巨人の掌底ジャイアント・ハンド〉」


ッ、俺に迫る剣の王が、上空から出現した土色の腕によって押し潰されたっ。

これは、魔法か!?しかも、この名前、何処かで。


「えと、ご、ごめんなさい!えと、ま、魔法、勝手に使った!」


クインシーの近くに小春さんと……サチの姿があった。

サチは、頭に魔法陣を乗せていて、それはまるで天使の輪の様に光沢を帯びていた。


「魔法って……それ」


俺が前に銀色以上確定十連ガチャチケットで引いた魔法じゃないか。

なんでサチが使えているんだ。


「これ、こ、これが、えと、サチ、ちゃんの能力……ですっ!万物の眼で、使い方、分かる、私っ!」


彼女の〈万物の眼〉は情報を読み取る以外にも、使い方すら見る事が出来るのかっ。


「サチちゃん。魔法、覚えれます、なんでも、!神に触れて、精神壊れた、けど。もう一度、魔法を覚えれば、使えますっ!だから、おぼえましたっ!」


俺が使い道無いからとおいて置いた共有パーティアイテム欄に眠る上位魔法が、まさかサチの手によって蘇るだなんて……。


「っ…剣の王、動きます、逃げてっ!」


小春さんの眼に魔法陣が出てくる。

クインシーと玄武さんが走り出して、それを追い抜く様に草陰のお爺さんが木刀を持って剣の王へ近づく。

〈巨人の掌底〉に亀裂が走る。血飛沫と共に破壊されると、〈剣の王〉バルゼが出てくる。


『珍妙な術だ』


「ぐ……う、うーっ……」


小春さんが〈剣の王〉の健在さを見て気分を悪くした。

そして過去の惨状を思い出しているのか、目をぐるぐるとさせていた。


「っ……うーっうーっッ!あ、うあ、ッ?」


ぺちり、と。

サチが振り向いて、小春さんの頬を叩いた。

ぺちぺちと何度もたたいて、にへらと笑い出す。


「あう、うぶっ」


無邪気な彼女を目の前にして。

涙を浮かべながらも笑い返す小春さん。

泣いてる場合じゃない。そう思ったのか。

覚悟を決めて、涙を拭いて、鋭い視線で声を荒げる。


「〈剣の王〉バルゼ、そ、そいつの能力ッ〈剣到る歴王の軌跡ソード・オブ・レガシー〉を、使いますっ!」


剣の王バルゼの情報を読み取り、小春さんはそう叫んだ。


「歴代の、〈剣の王〉が扱う刀剣を引き出す能力ですっ!〈剣の王〉バルゼは百七代目の〈剣の王〉、ですっ!けど、〈歴代〉なので、〈剣の王〉バルゼ以降の、未来の〈剣の王〉の刀剣も使えますっ!」


つまり、刀剣類の武器はほぼ無限に引き出される、と言う事か。

中々厄介な、けれど、握り締める武器は二つのみ、それさえ注意すれば……。


「今、持ってる剣、ナイフ、が『空間切貼のディメンション』!、空間を斬ったり、張り付けたりできますッ!曲刀がッ『時間切取のエディット』ッ、時間が歪む事を条件に、振ると時間を修正して、元に戻しますっ!」


っ!

武器の情報すら見る事が出来るのかっ。

しかも、発動する条件すら分かる……小春さん、戦闘力こそ無いものの。

その情報さえあれば、なんだか〈剣の王〉に対処出来る気がしてきたっ!










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