第53話
「が、あぁああッ!」
狂乱する草陰のお爺さんが飛び出した。
握り締める木刀を構えて振り翳す。
〈剣の王〉はその攻撃を換装したレイピアで受け止めた。
「『不変不斬のアンブレイカル』ッ、それは、絶対に壊せない刀剣、ですっ
!お爺ちゃん!気を付けて、それ、もう片方、刀剣が変わるッ!」
〈剣の王〉はもう片方の手に丸みを帯びた大剣を握った。
切っ先が曲線を描く鋭利な武器、それをお爺さんに向けて突いた。
「『牙突衝天のクラッシュ』ッ!吹き飛ばされ、あ、お爺ちゃんッ!」
最後まで説明を終える寸前に、草陰のお爺さんが吹き飛んで壁に激突した。
俺が一瞬、視線を草陰のお爺さんに向けた時、〈剣の王〉の背後に回り込んだ玄武さん。蹴りを脇腹にお見舞いする、だが甲冑を着込むバルゼには攻撃など無意味な様子だった。
「ちィ!」
バルゼが振り向くと同時に〈クラッシュ〉を振りかざす。即座に玄武さんは後退して逃げる。その速度は〈
職業・時空者の能力、自分自身の時間を早くさせる加速能力だ。
「はぁっ!」
更に背後からクインシーのチェーンソーがバルゼを狙う。
その一撃を喰らう寸前にバルゼはレイピアを換装して細長い鉤爪の様な逆手剣を握ると、即座にその場から退避した。
「『無類斬速のクイック』ッ、自身が逃げる、と言う名目のみ、速度を加速させる刀剣、ですっ!」
逃げる!?あのバルゼが、か?
クインシーのチェーンソーに恐怖を感じたのか。
なら、クインシーが居れば、殺す事が出来る……その可能性が見え―――。
「っふ……かはっ」
な、なんだ。クインシーが、急に血を吐き出した。
……あ、腹部に、血が……まさか、斬られたっ!?
『成程、この中で一番恐ろしいは……花嫁か。ならば……狙うは一つのみ』
〈剣の王〉がクインシーに剣を向ける。
何の変哲も無い、腰に添える様な片手剣に、赤い血が付着している。
「『即時瞬刺のピック』刀身を、延ばす……能力、です」
「クインシー!!くそ、時よ!!」
アルターを呼び出す。即座に時を止める。
しかし、〈剣の王〉はそれを見越して時斬りの剣を振った。
『命貰うぞ』
「―――貴方に渡すモノなど何一つありませんっ」
クインシーは腹を抑えながらチェーンソーを振う。
合わせる様に〈剣の王〉も大剣を構えた。
「あぶ、う、うぅぅっ―――ばっ!!」
小春さんの傍に居たサチが魔法陣を放つ。
大広間を埋め尽くす様な灼熱の炎が噴き出される。
『火か』
換装、剣を振う。
それで炎が搔き消される。
その一瞬を突いて、俺はクインシーに手を伸ばす。
「戻れッ!クインシー!」
「っ、拒否、します。旦那様を見捨てる様な真似は―――」
「命令だ!」
俺の命令に強制されて、クインシーが消える。
これで、クインシーが殺される事はない……だが、勝ち筋は消えた。
可能性があるとすれば……草陰のお爺さん、だろう。
「……小春さん、お爺さんをお願いします意識がある様ならばパーティ申請をして回復薬を使わせて下さい、それまでは」
「……俺らが持たせる、ってワケか?はっ……フリーターにゃちとキツイ」
「フリーターじゃなくてもキツいですよ………」
恐らく此処が分岐点だ。
お爺さんを復活させれば勝機が見える。
出来なければ……全滅だ。
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